横須賀共済病院野比療養所・旧病棟(現在の国立病院機構久里浜医療センターの裏手)
映画には、骨董屋の主人(草刈正雄)が入院している古い病院「鎌倉山療養所」が何度か登場します。監督夫人である原由子や、小泉今日子が登場するシーンもあるため、印象に残る場所です。
「ドキュメント・オブ・稲村ジェーン」や「平成NG日記」では、ロケ地として「久里浜共済病院」という名前が出てきますが、後にも先にもそのような名前の病院はありません。
2021年の「稲村ジェーン」ブルーレイ&DVD化発表直後の桑田佳祐監督のラジオ番組内でも、この病院のシーンを自身で回想して、「あれは久里浜の施設で・・・」という発言をしていましたが、それ以上の詳細な言及はありませんでした。
同じ横須賀市には「横須賀共済病院」があります。かつて、この病院の分院「横須賀共済病院野比療養所」が東京湾に面した横須賀市野比にありました。「久里浜共済病院」はおそらくこの病院のことだと思われます。
久里浜は野比の隣りにあり、久里浜のほうが大きい街のため、所在地が「野比」でも「久里浜」と称する施設は少なくありません。すぐ隣りの敷地には「国立病院機構久里浜医療センター(旧・国立久里浜病院)」がありますが、こちらは「野比」にあっても「久里浜」を名乗っています。
「横須賀共済病院野比療養所」は、1947年(昭和22年)から「国立久里浜病院」に貸与されたあと、1954年(昭和29年)に返還されて、1975年(昭和50年)に閉鎖されています。
そのため、映画の撮影時(1989年~1990年)にはすでに「久里浜」に「共済病院」はなく、「横須賀共済病院野比療養所」の旧病棟か、その隣りの当時の「国立久里浜病院」が使われたものと思われます。
その後、「横須賀共済病院野比療養所」の旧病棟は1999年(平成11年)の火事によって全焼して、現在は更地になっています。
なお、「横須賀共済病院野比療養所」も「国立久里浜病院」も、昭和40年代までは主に結核患者のための療養所として機能していて、骨董屋の主人が結核という言及はないものの、映画に出てくる「鎌倉山療養所」のモデルとしてもイメージがあっています。
稲村ケ崎公園(崖の上)
ストーリーも終盤を迎えるころに、江の島が見える高台で、ヒロシ(加勢大周)、マサシ(金山一彦)、波子(清水美砂)がチェリオを飲みながら談笑して、あとからカッチャン(的場浩司)も現われるというシーンでは、稲村ケ崎公園の展望広場が使われています。
稲村ケ崎公園は岬の形状にそって段状になっていて、奥の階段を登っていくと、崖のいちばん上にある展望広場に行くことができます。江の島の他、相模湾越しの富士山のビュースポットになっています。公園を訪れる多くの人は、下の二段になっている大きな広場か海辺の岩場で休んだり写真を撮ったりして思い思いにくつろいでいますが、展望広場まで登る人は少なく、穴場と言えます。