2028年4月オープン予定の「大矢部みどりの公園」として整備が進められている大矢部弾庫跡の特別見学ができるということで、三浦一族研究会が主催するイベントに参加してきました。大矢部弾庫跡は、かつて、三浦一族ゆかりの「円通寺」が存在した場所で、20を超える「やぐら」も確認されています。
今回のイベントでは、三浦一族研究会副会長の山城ガールむつみさんの解説のもと、円通寺跡(大矢部弾庫跡)を中心に、周辺の三浦一族ゆかりの地もあわせてめぐり、大矢部に眠る史跡の理解を深めました。
まず、集合場所となった腹切松公園では、三浦一族が根付いた大矢部や衣笠の歴史や地理について、この地で最期を迎えたと言う三浦大介義明の伝承を交えながら、簡単な説明がありました。
「大矢部弾庫跡 『円通寺跡』の特別見学」
- 集合場所腹切松公園
- 円通寺跡(大矢部弾庫跡)
- 薬王寺跡
- 近殿神社
- 解散場所清雲寺
今後「大矢部みどりの公園」として整備が進められる 大矢部弾庫跡

まずさっそく向かったのは、腹切松公園から大通りを挟んだ向かい側に位置する大矢部弾庫跡です。高い塀に囲まれていて、普段は門が閉ざされています。すでに「大矢部みどりの公園」の整備に向けた準備がはじめられているようで、これから工事が本格化するため、現状を見学できる機会は今回のイベントが最後になるだろうとのことでした。
大矢部弾庫跡は、南北にのびる谷戸を囲う山々と大通り沿いの住宅地に挟まれた土地にあります。戦前に旧日本軍の用地となって以来、長い間、一般の人の立ち入りは禁止されてきました。
現在はほぼ整地されていて、旧軍や戦後利用していた海上自衛隊の遺構はほとんど残っていませんでしたが、コンクリートで入口が閉ざされた隧道弾庫跡が印象的でした。

円通寺跡と深谷やぐら群の見学

円通寺があったとされる場所は、大矢部弾庫があったいちばん大きな谷戸の最奥とみられていて、その一段高くなった場所の平場が寺院跡推定地と言うことでした。平場の下はコンクリートの擁壁でほぼ垂直に補強されているため、仮設の階段を使って昇るようになっていました。
平場の上から谷戸の入口のほうを振り向くと、円通寺は、両側から山が迫る深い谷の、独特な景観の土地にあったことがよく分かりました。この場所の地名が「深谷」と名付けられた理由もよく理解できます。
円通寺跡の平場の背後斜面には、20穴を超える「やぐら」が確認されています。「やぐら」とは、主に中世に造られた、横穴式の墳墓または供養の場のことです。
最上部にはひときわ大きな「やぐら」があって、今は清雲寺に移された円通寺開基の三浦為通の墓と伝わる五輪塔などが祀られていたと言いますが、現状は樹木で覆われていて、今回のフィールドワークではその全容までは確認できませんでした。
今回は、比較的斜面の下の方にあり、アクセスもしやすい東側の「やぐら群」のみ見学することができました。これらの「やぐら」内部には石塔の一部とみられる遺構も残されていました。
「深谷やぐら群」と呼ばれるこれらの「やぐら」は、「大矢部みどりの公園」では史跡エリア「祈りのテラス」として整備される予定です。


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大矢部の三浦一族ゆかりの地めぐり
大矢部弾庫跡と円通寺跡の見学の後は、近隣の薬王寺跡、近殿神社をめぐりながら、最終目的地の清雲寺に向かいました。
薬王寺跡
薬王寺は、三浦義澄を弔うために和田義盛が創建したと伝わる寺で、現在は、山門があった場所を示す石碑と、馬の手綱を繋いだとされる「駒繋石」、そして、少し奥まった場所に三浦義澄の墓だけが残されています。
薬王寺裏の斜面にも「やぐら群」があったとのことでしたが、現在はコンクリートの擁壁が設けられているため、その姿を見ることはできません。

近殿神社
近殿神社(ちかたじんじゃ)は三浦義村を祀る神社で、かつてはこの境内も薬王寺の内だったとのことです。

清雲寺
清雲寺は、三浦義継が父・為継のために創建したと伝わる寺院で、「滝見観音」と呼ばれる現在の本尊は、かつて、円通寺の本尊だったものです。
清雲寺の本堂背後には、「滝見観音」と同じように円通寺跡から移された、三浦為通の墓と伝わる五輪塔や佐原盛信造立の板碑などが安置されています。今回のフィールドワークは、ここで解散となりました。


三浦半島民におすすめの 三浦一族研究会
フィールドワーク中の解説はガイドレシーバーを通して行われるため、終始、聞き取りやすいものでした。そしてなによりも、三浦一族研究会副会長である山城ガールむつみさんの豊富な知識に基づくお話しがとても分かりやすいものでした。
今回のイベントを主催した三浦一族研究会では、会員を募集しています。日本全国から引く手数多の山城ガールむつみさんによる解説の史跡めぐりや専門家を招いて開催される講演会に会員価格で参加できる他、学術的にも貴重な機関誌の発行などの特典があります。史跡めぐりや講演会は、会員以外でも参加できる場合がありますので、まずはそのようなイベントに参加してみるのもおすすめです。
そこまで三浦一族や歴史に興味がないという方でも、三浦半島地域に暮らすうえで、新たな発見をできる機会が待っているかもしれません。大人になってから三浦半島に引っ越してきたという方には、とくにおすすめです。
加速度的に新しいスキルを要求されるようになっていく世の中で、歴史は一気に古くなることはない知識のため、リスキリングにも最適です。

今回訪れた大矢部の三浦一族ゆかりの地






