桜の代名詞と言えばソメイヨシノですが、近年は河津桜に代表されるような、開花時期が早いうえに見ごろの期間も長く、しかも写真映えするという桜も多く見られるようになってきました。「ソメイヨシノの開花=春の訪れ」のような分かりやす図式のあった昭和期・平成初期までとは異なり、桜のお花見事情も大きく変化しました。
現在は、さまざまな品種の桜が、時期をずらして、それぞれの美しさを競い合いながら、ゆっくりと春の訪れを告げてくれます。そのおかげで、お花見シーズンもずいぶんと長くなりました。
一方、まちで見かける桜の種類が増えたことで、今度は「いつどこに行けばお花見をたのしめるのだろう?」と言う、新たな悩みの種も生まれるようになったのではないでしょうか。
この特集記事では、そのような疑問の参考になるように、桜の品種ごとの開花時期の目安を整理してまとめています。三浦半島で見ることができる桜を、近年の開花実績に基づいて整理したものですが、南関東であれば概ね同じ傾向がみられるはずです。
このさくらカレンダーを参考にして、個性豊かな桜の開花リレーをおたのしみください!
主なお花見スポットとして紹介しているリンク先のページでは、撮影日付きで桜の写真を掲載しています。こちらも、ぜひ、見ごろ時期や撮影スポットの参考にしてください!
桜の名称・品種名等 | 開花時期 |
---|---|
河津桜(カワヅザクラ) | 2月上旬~3月上旬 |
あたみ桜(アタミザクラ) | 2月上旬~3月上旬 |
玉縄桜(タマナワザクラ) | 2月下旬~3月上旬 |
春めき桜(ハルメキ) | 3月中旬 |
江戸彼岸(エドヒガン) | 3月下旬 |
枝垂桜(シダレザクラ) | 3月下旬~4月上旬 ※品種による |
陽光桜(ヨウコウ) | 3月下旬 |
染井吉野(ソメイヨシノ) | 3月下旬~4月上旬 |
大島桜(オオシマザクラ) | 3月下旬~4月上旬 |
山桜(ヤマザクラ) | 3月下旬~4月上旬 |
御室有明(オムロアリアケ)・御室桜 | 3月下旬~4月上旬 |
サトザクラ・八重桜・牡丹桜 | 4月上旬~4月中旬 ※品種による |
桐ヶ谷桜(キリガヤ)・御車返し(ミクルマガエシ) | 4月上旬~4月中旬 |
御衣黄桜(ギョイコウ) | 4月中旬~4月下旬 |
早咲きの桜【2月~3月中旬】
河津桜(カワヅザクラ)
開花時期
2月上旬~3月上旬
主なお花見スポット
三浦海岸河津桜並木
小松ヶ池公園
県立観音崎公園(花の広場)
大崎公園
鎌倉宮(大塔宮) ※初春桜・如月桜
河津桜(カワヅザクラ)は、静岡県河津町が原産の極早咲きの桜です。オオシマザクラとカンヒザクラを親に持つ品種とされています。カンヒザクラ由来の濃いピンク色の花や、見ごろが1ヶ月近く続くなどの特徴を持っています。
三浦半島では、三浦海岸エリアが関東でも有数の河津桜の名所として知られています。これは、1999年に静岡県河津町より譲り受けた苗木を植栽されたのがはじまりで、現在では1,000本以上の河津桜が見られます。

あたみ桜(アタミザクラ)
開花時期
2月上旬~3月上旬
主なお花見スポット
平和中央公園
あたみ桜(アタミザクラ)は、静岡県熱海市が原産の極早咲きの桜です。現地では1月から開花すると言い、日本でもっとも早咲きの桜ともされています。三浦半島では、本数の多い河津桜のなかで、三浦海岸や鎌倉宮に極々早咲きの個体があることからもっとも開花が早い桜とは言えませんが、平和中央公園では2月からあたみ桜の開花が見られます。
あたみ桜の色合いは、河津桜とソメイヨシノの中間くらいの濃いめのピンク色で、河津桜と同じように開花期間が長い特徴を持っています。

玉縄桜(タマナワザクラ)
開花時期
2月下旬~3月上旬
玉縄桜(タマナワザクラ)は、鎌倉市にある日比谷花壇大船フラワーセンター(神奈川県立大船フラワーセンター)が原産の早咲きの桜です。原産地である大船・玉縄地区周辺でとくに多く見られる他、その他の鎌倉市域周辺でも見ることができます。
玉縄桜の花はソメイヨシノとよく似ているのにも関わらず、開花時期はソメイヨシノより1ヶ月程度早いことから、早咲きのソメイヨシノと間違われることがあります。玉縄桜はソメイヨシノを親に持つ品種ですが、ソメイヨシノとは別の品種です。

春めき桜(ハルメキ)
開花時期
3月中旬
主なお花見スポット
県立観音崎公園(パークセンター)
春めき桜(ハルメキ)は、神奈川県南足柄市が原産の早咲きの桜です。足柄桜という別名もあり、主に神奈川県西部で植栽されている桜です。三浦半島では、県立観音崎公園のパークセンター前で見ることができます。花の香りが強いという特徴を持っています。

標準的な開花時期の桜【3月下旬~4月上旬】
江戸彼岸(エドヒガン)
開花時期
3月下旬
主なお花見スポット
くりはま花の国(冒険ランド) ※荘川桜
江戸彼岸(エドヒガン)は、日本の野生種の桜の一つで、ソメイヨシノの母にあたる品種です。そのため、ソメイヨシノとよく似た特徴を持つ品種ではありますが、その名前のとおり、ソメイヨシノより1週間程度早いお彼岸ごろに開花します。野生種と言うこともあってか、桜の中では、大木にまで成長しやすく、寿命が長い個体が見られるのもエドヒガンの特徴です。
くりはま花の国の冒険ランドで見られるエドヒガンは、樹齢450年とされる岐阜県高山市荘川町の古木「荘川桜」の二世です。

枝垂桜(シダレザクラ)
開花時期
3月下旬~4月上旬 ※品種による
主なお花見スポット
本覚寺
安国論寺
明月院
等覚寺(久村)
称名寺(野比)
狭義の枝垂桜(シダレザクラ)は、江戸彼岸(エドヒガン)から生まれた枝が枝垂れた品種を指します。そのため、開花時期や花の形状などの特徴はエドヒガンと同様です。
広義の枝垂桜は、枝が枝垂れた桜全般のことを言い、交雑した品種、親の品種によって、開花時期や花の形状の特徴はさまざまです。
鎌倉の本覚寺や安国論寺などの、ソメイヨシノより1週間程度早く見ごろをむかえる枝垂桜は、狭義の枝垂桜またはエドヒガンの影響が濃い枝垂桜である可能性が高いと考えて良いでしょう。
一方、北鎌倉の明月院の枝垂桜はソメイヨシノより遅れて開花することや、花の色が濃いめのピンク色をしていることから、エドヒガン由来の枝垂桜ではないか、エドヒガンの影響が薄い枝垂桜と言えるでしょう。

陽光桜(ヨウコウ)
開花時期
3月下旬
主なお花見スポット
県立観音崎公園(花の広場)
くりはま花の国(第二駐車場周辺)
陽光桜(ヨウコウ)は、愛媛県東温市の高岡正明氏によって作出された品種です。
河津桜と同様にカンヒザクラを親に持つ陽光桜は、濃いピンク色の花を咲かせるという見た目の特徴が河津桜とよく似ています。開花時期は河津桜よりだいぶ遅く、ソメイヨシノより1週間ほど早く見ごろをむかえます。

染井吉野(ソメイヨシノ)
開花時期
3月下旬~4月上旬
主なお花見スポット
走水水源地公園
衣笠山公園
県立塚山公園
米海軍横須賀基地
鶴岡八幡宮・段葛
桜山中央公園
野島公園
染井吉野(ソメイヨシノ)は、江戸時代末期に江戸染井村(現・東京都豊島区)の植木屋が売り出したことで広まったとされる品種です。
ソメイヨシノはその見た目の美しさから、明治期から昭和後期までの長い間、桜やお花見の代名詞として全国各地で大量に植栽されました。そのため、全国の桜の開花・満開予報や桜前線などの基準に用いられています。
しかし、これらが寿命をむかえる時期になってきていることや病気に弱いと言うことが分かってきていて、近年は伐採され、減少傾向にあります。
現在ではその代替の品種にソメイヨシノが選ばれることはなく、その場所ごとに、比較的新しいさまざまな品種の桜が植えられています。

大島桜(オオシマザクラ)
開花時期
3月下旬~4月上旬
主なお花見スポット
千代ヶ崎砲台跡
くりはま花の国
六国見山森林公園
大島桜(オオシマザクラ)は、日本の野生種の桜の一つで、その名前のとおり、古くから伊豆諸島や関東南部に多く自生していたと考えられている品種です。横須賀市ではオオシマザクラを市の木としていて、三浦半島の山でも多く見られます。
白い色の花を付けるのが特徴で、ソメイヨシノより少し遅れて開花します。
ソメイヨシノや、近年人気が高まっている河津桜などの花の色が濃い桜と比べると地味な存在ですが、千代ヶ崎砲台跡などの史跡にはよく似合う桜です。オオシマザクラは河津桜の親の一つにあたるとされていて、どちらも新緑の出るタイミングが早いという似たような特徴も持っています。

山桜(ヤマザクラ)
開花時期
3月下旬~4月上旬
主なお花見スポット
散在ガ池森林公園(鎌倉湖)
六国見山森林公園 ※夫婦桜
安国論寺 ※妙法桜
山桜(ヤマザクラ)は、日本の野生種の桜の一つで、本州・四国・九州などに広く分布しています。関東では、古くから自生している桜と言えば、オオシマザクラと二分するような存在です。
ヤマザクラとオオシマザクラの見た目の違いは、ヤマザクラのほうが花も葉も赤みがかっているという特徴があります。開花時期はどちらもほとんど同じです。また、公園などに植栽されたものも含め、オオシマザクラのほうが沿岸で多く見られる傾向にあり、ヤマザクラはその名前のとおり山で多く見かけます。
ヤマザクラは鎌倉市や横浜市金沢区の市の木に指定されていて、三浦丘陵北部の山では自生している木を多く見ることができます

御室有明(オムロアリアケ)・御室桜
開花時期
3月下旬~4月上旬
主なお花見スポット
龍華寺
御室有明(オムロアリアケ)または御室桜は、京都市右京区・仁和寺(御室御所)に植栽されている桜です。関東ではあまり見かけることがない桜ですが、真言宗御室派の地域の中心的な寺院である龍華寺で見ることができます。
ソメイヨシノよりも花が大きく、香りも強く、木の背丈が低いという特徴があります。開花時期は、ソメイヨシノと同じか若干遅い傾向にあります。

遅咲きの桜【4月上旬~】
サトザクラ・八重桜・牡丹桜
開花時期
4月上旬~4月中旬 ※品種による
サトザクラという品種の桜はなく、オオシマザクラにヤマザクラなどの他の品種が交配して生まれた桜の総称です。八重桜・牡丹桜も同様で、そのなかで八重咲の桜をこのように呼びます。
開花時期は、ソメイヨシノより1週間程度遅いものが多く、遅咲きの桜と言えます。三浦半島にはまとまって咲く群生地はほとんどありませんが、花のサイズが大きいため、一本の木であっても、見ごたえがあります。
一つ前の御室桜や、この後に紹介する桐ヶ谷桜と御衣黄桜もサトザクラ群の一種で、多くの人がサトザクラ・八重桜・牡丹桜として想像するもの以外にも、バリエーション豊かな品種が存在します。

桐ヶ谷桜(キリガヤ)・御車返し(ミクルマガエシ)
開花時期
4月上旬~4月中旬
主なお花見スポット
本覚寺
鶴岡八幡宮・若宮大路
極楽寺
桐ヶ谷桜(キリガヤ)は、鎌倉市材木座にあった古い地名「桐ケ谷」に由来する品種で、御車返し(ミクルマガエシ)という別名で呼ばれることもあります。サトザクラ群の一種とみられ、一本の木に一重の花と八重の花を付けるのが特徴で、大ぶりの花は見ごたえがあります。
極楽寺の桐ヶ谷桜は、その特徴のまま「八重一重咲分け桜」とも呼ばれていて、鎌倉幕府第8代執権・北条時宗お手植えの桜から派生したものと伝えられています。
近年は鎌倉ゆかりの桜として鎌倉市中心部で多く植栽されるようになり、本覚寺やその近くの若宮大路、鶴岡八幡宮境内などで見られます。

御衣黄桜(ギョイコウ)
開花時期
4月中旬~4月下旬
主なお花見スポット
海の公園
御衣黄桜(ギョイコウ)は、緑色の花を咲かせるめずらしい品種です。花の中心部は赤みを帯びていて、オオシマザクラの緑色バージョンといった雰囲気も感じられます。
御衣黄桜は、三浦半島では海の公園の芝生広場の一角で見ることができます。あまりにも見慣れない桜のため、その特徴を知らないと、そばを通っても桜だとは気がつかないかもしれません。
御衣黄桜の開花時期は、ソメイヨシノの見ごろから2週間程度経過したあとで、遅咲きの桜の一種です。

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