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正観寺 | かつての榎戸の鎮守「薬一王」こと薬師如来を安置する別名「榎戸薬師」

正観寺(撮影日:2026.10.06) 横須賀
正観寺(撮影日:2026.10.06)

横須賀・浦郷町の正観寺しょうかんじは、「榎戸薬師えのきどやくし」という別名を持つ、浄土宗の寺院です。「榎戸」とはこのあたりの古くからの地名で、中世には鎌倉の外港の一つとして栄えた榎戸湊があった場所です。

古くよりこの地には、榎戸の鎮守として、神仏習合の薬一王神が薬師堂に祀られていました。これが「榎戸薬師」と呼ばれ、親しまれてきたゆえんです。
しかし、明治維新後の神仏分離令を受けて、薬一王神はその別当寺(神社を管理する寺院)であった正観寺に薬師如来として祀られることになりました。
境内の隣接地に鎮座する山中社は、明治維新後、薬一王神に代わり榎戸の鎮守として祀られるようになった神社で、山中権現社を遷したものです。

山号医王山
宗派浄土宗
寺格―
本尊阿弥陀如来
創建1582年(天正10年)頃
開山称誉源公
中興:面誉含竜
開基―

正観寺の薬師如来は、三浦薬師如来霊場の第19番札所になっています。三浦薬師如来霊場は古くより親しまれてきたものですが、正観寺の札所としての歴史は浅いです。三浦薬師如来霊場は、33年に一度、大開帳が行われます。正観寺は、前々回にあたる1984年(昭和59年)の大開帳で番外として追加され、前回の2017年に正式な札所として加えられました。
これは、「薬師如来」ではなく榎戸の鎮守「薬一王神」として祀られてきたという歴史的経緯によるものとみられています。

正観寺・山門より山中社方面を望む(撮影日:2026.10.06)
正観寺・山門より山中社方面を望む(撮影日:2026.10.06)
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山号・院号が示す薬師如来が信仰の中心であり続けた正観寺の歴史

正観寺・本堂の扁額(撮影日:2026.10.06)
正観寺・光明寺第109世大誉真峯(石井真峰)の筆による本堂の扁額(撮影日:2026.10.06)

1962年(昭和37年)に発行された「浄土宗神奈川教区寺院誌」によれば、安土桃山時代の天正(1573年〜1592年)のころ、鎌倉の光明寺に滞在していた称誉源公が、三浦半島一周の旅に出て、その帰途、走水より海路で榎戸に上陸した際、土地幽静、風光明媚をめでて「これ有縁の地、これ我が往生の地」と、この地に草庵を結んだのが正観寺のはじまりとされています。称誉源公は、平安時代の天台宗の僧・智証大師(円珍)の作という薬師如来像を念持仏として尊崇していたと言い、これが寺の中心的な仏像になったと考えられます。

正観寺は、山号を「医王山」、院号を「薬師院」と言います。「医王山」は薬師如来を本尊とする寺院に多く見られる山号です。三浦半島では逗子・沼間の神武寺や横浜金沢・釜利谷南の東光禅寺が「医王山」という山号を持ち、いずれも、本尊は薬師如来です。
現在の正観寺の本尊は阿弥陀如来ですが、山号や院号からも、寺の由緒からも、創建当初より、薬師如来が信仰の中心となる寺院であったことは明らかです。ところが、江戸時代後期に編さんされた地誌「新編相模国風土記稿」では、山号は「醫王山(医王山)」で本尊は「彌陀(阿弥陀如来)」とみえ、明治維新前には山号と本尊のねじれ現象は起きていたことが分かります。
いつしか、あくまで、薬師如来は薬一王神として薬師堂に祀る榎戸の鎮守であり、阿弥陀如来は別当寺単体としての正観寺の本尊という、神仏習合の時代ならではのすみ分けができ、やがて、明治維新の神仏分離を迎え、現在に至ったということなのでしょう。

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神武寺との信仰的・地理的なつながり

正観寺・山門にかかる「榎戸薬師」の扁額(撮影日:2026.10.06)
正観寺・山門にかかる「安産・厄除・交通安全 榎戸薬師」の扁額(撮影日:2026.10.06)

なお、神武寺の史料によれば、江戸時代中期の享保年間(1716年~1736年)に寺の十二神将を新たに造りなおした際、古い像は正観寺の薬一王神に譲ったという記録が残っています。それが一時的なものだったのか継続的なものだったのかは分かりませんが、正観寺・薬師堂は、神武寺ともつながりがあったようです。

かつて、正観寺のある榎戸付近からは、鷹取山を経由して神武寺に至る尾根道が続いていました。これが、巡礼路や修験道のような意味合いを持つ道として使われていたとしても、不思議ではありません。現在では宅地開発などによって姿を変えている箇所もありますが、正観寺のある浦郷町から、浜見台~がらめきの切通~鷹取山ハイキングコース~神武寺というルートで、その道筋を辿ることができます。

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正観寺(榎戸薬師)境内の見どころ

薬師堂

正観寺の薬師堂には、薬師如来が薬一王神として祀られていた時代の名残りとして、「薬一王」と書かれた扁額が掲げられています。(薬一王神時代からある建築ではありません)

正観寺・薬師堂(薬一王)(撮影日:2026.10.06)
正観寺・薬師堂(薬一王)(撮影日:2026.10.06)

「深浦筆子中」と刻まれた石塔

明治前期、正観寺では寺子屋が開かれていました。その後、南浦学舎と呼ばれるようになり、住職の転任によって本浦学舎(後の浦郷学校、現在の浦郷小学校の前身)に統合されました。

正観寺・「深浦筆子中」と刻まれた五輪塔風の石塔(撮影日:2026.10.06)
正観寺・「深浦筆子中」と刻まれた五輪塔風の石塔(撮影日:2026.10.06)

六地蔵が刻まれた石塔とお地蔵様

正観寺・六地蔵が刻まれた石塔とお地蔵様(撮影日:2026.10.06)
正観寺・六地蔵が刻まれた石塔とお地蔵様(撮影日:2026.10.06)

室町期のものとされる五輪塔と宝篋印塔

正観寺・五輪塔と宝篋印塔(撮影日:2026.10.06)
正観寺・五輪塔と宝篋印塔(撮影日:2026.10.06)

鐘楼

正観寺・鐘楼(撮影日:2026.10.06)
正観寺・鐘楼(撮影日:2026.10.06)

山門

正観寺・山門(撮影日:2026.10.06)
正観寺・山門(撮影日:2026.10.06)

庚申塔

正観寺・山門下の庚申塔(撮影日:2026.10.06)
正観寺・山門下の庚申塔(撮影日:2026.10.06)
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正観寺(榎戸薬師)周辺の見どころ

山中社
横須賀・浦郷町の山中社やまなかしゃは、「榎戸薬師えのきどやくし」として知られる正観寺境内の隣接地に鎮座する、深浦湾に面した榎戸地区の鎮守です。明治維新まで、この地には、榎戸の鎮守として薬...
能永寺
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深浦湾堤防
深浦湾は、東京湾に面した長浦湾北岸入口付近に、深く入り込んだ入り江です。西岸(南岸)は深浦漁港、深浦ボートパーク(よこすか・ふかうら海の駅)の船舶係留施設、京浜ドック、米軍施設として利用されていて、...
海上自衛隊横須賀基地・船越地区
海上自衛隊横須賀基地・船越ふなこし地区は、海上自衛隊自衛艦隊司令部や開発隊群などが置かれている海上自衛隊の拠点です。いずれも長浦湾(長浦港)の左岸(北側)に位置していて、最寄り駅は京急線の京急田浦駅...
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貝山緑地かいやま りょくちは、追浜の海岸近くにわずかに残る丘陵地を利用した緑地公園です。園内には約1,000本の杏(アンズ)の木が植えられている、神奈川県有数の杏の名所です。頂上の展望台は、東京湾や...

DATA

住所 横須賀市浦郷町2-79
アクセス
行き方

●バス利用の場合
京急線「追浜駅」より京急バス「田浦駅」行き、または、JR横須賀線「田浦駅」より京急バス「追浜駅」行きで、『榎戸』下車徒歩約5分

●徒歩の場合
京急線「追浜駅」より徒歩約30分

駐車場 あり
料金

無料(志納)

電話番号 046-865-3464
ウェブサイト https://jyoudosyuu-syoukanji.aa0.netvolante.jp/
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