「京急油壺マリンパーク」は、2021年9月30日をもって閉館しました。開館当時は最先端の水族館でしたが、建物や設備の老朽化にともない、53年の歴史に幕を閉じました。
また、「京急油壺マリンパーク」跡地にオープンした「京急油壺温泉キャンプパーク」も、2024年3月16日に営業終了しました。
京急油壺マリンパークは、かつて「東洋一の大水槽」と呼ばれた、三浦半島の南西に位置する、相模湾に面した水族館でした。
屋内の劇場で開かれるイルカやアシカのショーに、ストーリー性があるのが特徴でした。
1990年代以降にオープンまたは全面リニューアルした水族館のような流行の展示施設はありませんでしたが、昭和レトロを感じる園内は比較的コンパクトにまとまっていて、ファミリー向けと言えました。人気のイルカやアシカのショーや餌付け、大水槽の展示なども、落ち着いて見ることができました。
INDEX
屋内大海洋劇場「ファンタジアム」の いるか・あしかのショー
いちばんの目玉は、屋内大海洋劇場「ファンタジアム」で開催されていた、いるか・あしかパフォーマンスでした。イルカやアシカがいかに賢い動物であるかがよく分かりました。
ショーは照明・音響を駆使したミュージカル仕立てで進んでいき、およそ30分という開催時間があっという間に感じられました。
客席には、ペット同伴席も用意されていたため、せっかくペットと一緒に来たのに見られないということもありませんでした。
30の水槽からなる水族館「魚の国」
30の水槽からなる水族館「魚の国」では、古代からの姿のままで現代まで生き続けているシロチョウザメ類のコーナーや、タカアシガニやアカテガニなどの油壷が面する相模湾に生息する海洋生物を展示するコーナーなど、テーマごとに分かりやすく展示されていました。
なかでも、360度の回遊水槽を回遊する大型のサメ類は、迫力満点でした。
また、2014年3月に横須賀市走水で見つかった、ダイオウイカの標本の展示もされていました。ダイオウイカが東京湾で見つかることはめずらしいそうです。
捕獲後、油壺マリンパークに到着してすぐに死亡してしまったとのことですが、捕獲から学術解剖されるまでの経緯や解説が、標本とともに展示されていました。
愛くるしい姿が人気の「ペンギン島」のペンギンたち
「ペンギン島」と呼ばれるペンギンの展示エリアでは、キタイワトビペンギンが泳ぐ姿や食事をする姿などを間近で観察することができました。その愛くるしい姿に似つかわしくない太い鳴き声に、驚くか人がたくさんいました。
「ペンギン島」はあまり大きくありませんでしたが、そこで数十羽のペンギンが同時に見られるため、いろいろな行動や表情をしているペンギンを見ることができました。
油壺マリンパークではキタイワトビペンギンの繁殖に力を入れていたため、赤ちゃんペンギンを見られることもありました。
間近で見られるアシカやカワウソの餌付けなど
アシカやカワウソのお食事タイムは規則正しく決められていたため(各展示コーナーの前や公式ホームページに掲示)、この時間にそって園内をまわるとたのしめました。
また、「かわうその森」では、川の上流から河口までの流域をビオトープのかたちで再現されていて、そこに暮らす生物の観察をすることができるようになっていました。
流域の実物は、油壺マリンパークのすぐ近くの「小網代の森」で見ることができます。
ロイヤルカップルのデートスポット
かつて、秋篠宮さまと紀子さまがご結婚前にデートをしていたことが大きく報道されて、油壺マリンパークは一躍人気スポットとなりました。
お二人のご成婚は、当時「紀子さまフィーバー」とも言われたほど注目の的で、全国的にもお祝いムードに包まれており、油壺マリンパークのレストランでカレーライスを食べたことなどが詳細に報道されました。
同じ神奈川県内の八景島シーパラダイスや新江ノ島水族館などが人気になるのはもう少し後のことで、これも、歴史ある水族館ならではのエピソードだといえると思います。
穴場ビーチもオススメ
すぐ近くには、「胴網」「荒井浜」「横堀」といった比較的小規模な穴場といえる海岸があり、イベントの待ち時間に訪れたり、あわせて散策するのもオススメでした。(油壺マリンパークは当日中の再入場が可能でした)
とくに胴網海岸は油壺マリンパークにいちばん近い海岸で、正面入口を外側から見て右側にある道を下るとすぐの場所にあります。
閉館にともない廃止となったバス路線
京急油壺マリンパークの閉館にともない、2021年9月30日をもって、「京急油壺マリンパーク」バス停、および、以下の路線が廃止となりました。「油壺」行きバスは運行回数、運行時刻を変更して存続しています。
- 三崎口駅~引橋・油壺入口~京急油壺マリンパーク
- 京急油壺マリンパーク~(油壺~三崎港間直行)~城ヶ島
- 京急油壺マリンパーク~三崎港~城ヶ島
- 京急油壺マリンパーク~栄町~三崎東岡
幻の京急久里浜線延伸計画
京急久里浜線の終着駅は「三崎口駅」ですが、以前はさらにこの先、油壺を経由して三崎港付近まで線路を伸ばす計画がありました。
大規模住宅地やゴルフ場の造成など、沿線の開発とセットに構想されていましたが、用地買収が進まなかったことや、途中の「小網代の森」が風致地区に指定されたことで開発が困難になったことなどの理由により、2016年にこの計画は白紙となりました。
交通が不便な油壷に当初の計画通り駅ができていたら、京急油壺マリンパークもその周辺も今とは違った景色になっていたかもしれません。
しかし、それは同時に、首都圏に残された貴重な自然である「小網代の森」が失われてしまっていたことも意味しています。
なお、「都市計画道路西海岸線」(三浦縦貫道路の延伸区間)という、「三崎口駅」以南を京急久里浜線延伸計画と同じようなルートでたどる構想が道路にも存在しています。