自衛隊武山駐屯地は、陸上自衛隊武山駐屯地、海上自衛隊横須賀教育隊、航空自衛隊武山分屯基地、陸上自衛隊高等工科学校などからなる、自衛隊施設です。陸海空の自衛隊が1か所にそろう、全国的にもめずらしい施設です。(「駐屯地」とは陸上自衛隊の基地を指す名称ですが、陸海空の複数の自衛隊施設が混在している施設のため、この記事では便宜上、施設全体を「自衛隊武山駐屯地」と呼称しています)
自衛隊武山駐屯地は、三浦半島の相模湾側の中央部を大きくえぐるように入り込んでいる小田和湾の奥に位置しています。一部の飛び地を除いて、全域が横須賀市御幸浜に所在しています。
「御幸浜」の大部分は、第二次世界大戦前に埋め立てられて誕生しました。かつては自然海岸が広がっていましたが、現在はほぼ全域が護岸整備された海岸になっています。
自衛隊武山駐屯地では、例年、8月最後の土曜日に駐屯地が一般開放されて、「横須賀市西地区納涼花火大会」が開催されています。横須賀西海岸の夏の終わりを飾る、恒例のイベントになっています。
武山海兵団を前身に持つ陸上自衛隊高等工科学校などの教育機関
自衛隊武山駐屯地がある場所は、終戦まで旧日本海軍の武山海兵団や大楠機関学校が利用していました。武山海兵団は主に新兵教育などを施す部隊で、横須賀本港地区にあった横須賀海兵団を増設されるかたちで設けられました。
戦後はアメリカ軍に接収され、キャンプ・マクギル (Camp McGill)として使用されていましたが、1958年(昭和33年)に日本へ返還されて、自衛隊の武山駐屯地となりました。
現在、陸上自衛隊武山駐屯地(東部方面混成団)と海上自衛隊横須賀教育隊では、主に新入隊員等の基本教育が行われています。戦時中まであった武山海兵団と似かよった任務を与えられたのは、武山駐屯地に教育のための設備が残っていたため、これを転用したためでしょう。
また、武山駐屯地内にある陸上自衛隊高等工科学校(旧陸上自衛隊少年工科学校)は、全寮制の高校に相当する学校で、将来、陸曹(幹部と一般隊員の間に立つ中間管理職に相当する階級)となるべく人材を養成する教育機関です。この大学版とも言える、幹部候補生を養成する防衛大学校と同様に、学費や寮費は無償で、給与が支給されます。陸上自衛隊高等工科学校の生徒は、通信制の県立横浜修悠館高校に入学するため、県立横浜修悠館高校名義のクラブ活動で全国大会に出場して活躍するというケースもあります。
陸上自衛隊高等工科学校の1年生や、陸上自衛隊武山駐屯地や海上自衛隊横須賀教育隊の自衛隊候補生は、外出時に制服着用が義務付けられています。そのため、休日には、最寄り駅である京急久里浜線の三崎口駅や駅までの路線バス車内などで彼ら・彼女らの制服姿を見かけることがあり、これはこの地域独特の光景と言えます。
首都圏防空を担うパトリオットを配備する航空自衛隊武山分屯基地
陸上自衛隊武山駐屯地や海上自衛隊横須賀教育隊と同じ地域内にある航空自衛隊武山分屯基地は、神奈川県唯一の航空自衛隊基地です。航空自衛隊武山分屯基地には首都圏防空を担うペトリオット・システム(パトリオット・システム)が配備されています。
航空自衛隊武山分屯基地は、基地の南側の高台に位置する、長井海の手公園 ソレイユの丘近くに、飛び地があります。2011年に発生した東日本大震災における被災地の津波被害を受けて、海に面した航空自衛隊武山分屯基地の機能の一部は長井地区へ移転しています。