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十三峠 | 田浦と逸見を山越えで結ぶ浦賀道最大の難所

十三峠・塚山公園より望む(撮影日:2024.06.26) 横須賀
十三峠・塚山公園より望む(撮影日:2024.06.26)

十三峠じゅうさんとうげは、現在の横須賀市田浦町から長浦町の山間部を通り西逸見町方面に抜ける、かつて浦賀道最大の難所と呼ばれた峠道です。「浦賀道の十三峠付近」として、神奈川県が選定した「かながわの古道50選」に選ばれています。

浦賀道とは、江戸時代、浦賀奉行所に向かうために整備された東海道の脇街道のことで、保土ヶ谷宿から金沢を経由して横須賀の東京湾側に沿って浦賀に至る「東浦賀道(東回り浦賀道)」と、戸塚宿から鎌倉・逗子・葉山を経由して横須賀の内陸部を横断して浦賀に至る「西浦賀道(西回り浦賀道)」の、二つのルートが存在していました。このうち、十三峠は、東浦賀道の一部でした。
十三峠を越えるのはあまりにもたいへんだったことから、東浦賀道よりも西浦賀道のほうが主流だったと言います。また、金沢から横須賀までは、海路を使うという選択肢もありました。

古道の通称のため、どこからどこまでが旧浦賀道十三峠なのか厳密に定義することはできませんが、田浦側は長善寺近くの大田坂下から、逸見側は塚山公園の登り口でもある西逸見吉倉隧道出口(西逸見町側)付近までのおよそ2.5kmを、広義の十三峠と呼ぶことができます。旧浦賀道の一部だったこれらの登り口は、急峻な坂道や切通しがあり、かつて難所だった名残りを見ることができます。
狭義の十三峠としては、地理院地図での地点名の表示箇所や四等三角点(十三峠給水塔付近)が該当します。

十三峠という名前の由来には、保土ヶ谷宿から13番目の峠だったからという説や、峠に十三仏が祀られていたからという説、この区間に13ヵ所の峠があったからという説など、諸説あります。
現在は舗装路となり、線形も勾配もなだらかに改良されていますが、浦賀道最大の難所と呼ばれていたくらいですから、十三峠約2.5kmの区間に大小13の峠がそびえていたとしても、とくに違和感はないでしょう。

十三峠・田浦梅の里より望む(撮影日:2021.11.19)
十三峠・田浦梅の里より望む(撮影日:2021.11.19)
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十三峠の旧浦賀道ルートと現在のルート

十三峠・大田坂上より塚山公園方面に続く尾根道を望む(撮影日:2020.12.04)
十三峠・大田坂上より塚山公園方面に続く尾根道を望む(撮影日:2020.12.04)

十三峠は、明治時代に入ってもなお、当時の国道45号に指定されるなど、横須賀の東京湾側を陸路で通り抜ける際の幹線として利用されていました。しかし、昭和初期にトンネルを多用した近代的な現在の国道16号が開通すると、幹線道路としての役目を終えることとなりました。幹線道路だったとは言え、田浦側・逸見側それぞれの登り口(大田坂塚山公園入口)はとても急坂で道幅も狭く、大型の自動車が通行できるような道路ではありませんでした。

現在の十三峠は、田浦側は、大田坂を経由せずに、のの字橋(のの字坂)を通りJR横須賀線・田浦駅方面に抜けることができるようになっています。このルートは昭和期に開発・建設されたもので、旧浦賀道ではありません。
逸見側の、県道28号本町山中線(旧本町山中道路)をくぐって、京急線・安針塚駅方面などに抜ける道も同様で、こちらは昭和後期~平成期に開発・建設されたルートです。

十三峠公園(撮影日:2020.12.04)
十三峠公園(撮影日:2020.12.04)
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江戸時代に安藤広重も描いた浦賀道・十三峠からの眺望

十三峠より横須賀港方面を望む(撮影日:2020.12.04)
十三峠より横須賀港方面を望む(撮影日:2020.12.04)

現在の十三峠の尾根道沿いには民家も点在していて、江戸時代の雰囲気を留めているとは言い難いです。しかし、ところどころで見られる谷戸最奥からの眺望は、ここが難所であったことを十分想像させてくれます。

江戸時代後期に活躍した浮世絵師・歌川広重安藤広重)も、三浦半島などを旅して記録した「武相名所旅絵日記」のなかで、「浦賀道田浦山中」と題して、ここ十三峠からの眺望を描いたと言います。

十三峠より長浦港方面を望む(撮影日:2020.12.04)
十三峠より長浦港方面を望む(撮影日:2020.12.04)
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戦後の食糧不足対策として開拓された十三峠周辺

十三峠・峠下の段々畑を塚山公園より望む(撮影日:2016.04.17)
十三峠・峠下の段々畑を塚山公園より望む(撮影日:2016.04.17)

かつては木々が生い茂るような山道だったと言う十三峠周辺が切り開かれたのは、第二次世界大戦後のことでした。戦後の食糧不足対策として、1948年(昭和23年)より20世帯ほどが十三峠周辺に入植して、農地開拓がはじめられました。

彼ら彼女ら、十三峠開拓農業協同組合が建立した「開拓記念碑」が、今も十三峠の傍らに残されています。

十三峠・開拓記念碑(撮影日:2020.12.04)
十三峠・開拓記念碑(撮影日:2020.12.04)
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十三峠周辺の見どころ

田浦側

逸見側

DATA

住所 横須賀市長浦町・田浦泉町・田浦町
アクセス
行き方

●田浦側の大田坂上付近まで
JR横須賀線「田浦駅」より徒歩約15分

●逸見側の十三峠公園付近まで
京急線「安針塚駅」より徒歩約25分、または、京急線「逸見駅」より徒歩約30分

駐車場 なし
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