県立塚山公園は、京急線の安針塚駅や逸見駅の山側に位置する、横須賀市内屈指の桜の名所として親しまれている公園です。神奈川県が選出した「かながわの景勝50選」に選ばれています。
塚山公園は眺望が良い公園としても知られていて、港の見える丘からは房総半島や横浜まで一望でき、眼下には横須賀港に停泊する艦船もよく見えます。
園内には国の史跡に指定されている三浦按針夫妻の供養塔があります。
三浦按針はイギリス人(イングランド人)で、本名はウィリアム・アダムスと言います。三浦按針は、オランダのロッテルダムから極東を目指して航海に出て、日本にたどり着きました。当初は帰国を願い出たものの叶わず、当時の三浦郡逸見村に領地を与えられ、徳川家康の外交顧問として活躍しました。また、三浦按針は、家康や江戸幕府に砲術や造船術などの西洋文明も伝えたと言います。
その功績をたたえて、毎年4月上旬には「三浦按針祭観桜会」が開かれています。
例年、桜が開花する頃に開催されている「塚山公園さくら祭」は、多くの花見客でにぎわいます。「塚山公園さくら祭」開催中は、夜は提灯に明かりが灯されて、桜の花が幽玄に浮かび上がります。
INDEX
塚山公園は横須賀市内屈指の桜の名所
県立塚山公園は横須賀市内屈指の桜の名所として知られています。満開になると、小高い山全体が薄いピンク色に染まります。
塚山公園はソメイヨシノで、「かながわの花の名所100選」に選ばれています。園内では、ソメイヨシノの他にも、オオシマザクラやヤマザクラ、枝垂れ桜など、少しずつ見ごろ時期をずらしながら、定番の桜たちを見ることができます。
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三浦按針(ウィリアム・アダムス)夫妻の墓
県立塚山公園内のひと際高い場所には、三浦按針(ウィリアム・アダムス)とその妻の墓(供養塔)とされる「按針塚(安針塚)」があります。右側の凝灰岩製の塔が按針、左側の安山岩製の塔が按針の妻のものです。
三浦按針(ウィリアム・アダムス)は、伊豆・伊東で西洋船を建造したり、浦賀で国際貿易をはじめるなど、徳川家康の外交顧問として、江戸幕府成立前後に活躍しました。しかし、家康が死没すると、江戸幕府は鎖国へと向かい、後ろ盾を失った按針は長崎・平戸で亡くなりました。
この地で供養されているのは、三浦按針の領地であった逸見の地にあることと、江戸を一望できる場所に葬ってほしいという本人の遺言によるものであると伝えられています。
三浦按針は江戸城にもほど近い日本橋にも屋敷を構えていて、昭和初期まではこの按針屋敷にちなんだ「按針町(安針町)」という町名も残っていました。
塚山公園の三浦按針夫妻の墓の前には、日本橋按針町より寄進された石灯籠があり、江戸・日本橋でも按針の功績が偲ばれていたことがうかがい知れます。
明治・大正期には外国人の観光地だった按針塚
明治時代に入ると、三浦按針(ウィリアム・アダムス)が再び脚光を浴びるようになります。按針も活躍した浦賀へのペリー来航をきっかけに日本が開国すると、横浜の居留地に住むイギリス人の間で、日本に最初に来たイギリス人探しがはじまりました。
1872年(明治5年)、横浜で貿易商を営むジェームス・ウォルタースが三浦按針の菩提寺だった逸見村の浄土寺をつき止めて、三浦按針夫妻の墓(供養塔)である「安針塚(按針塚)」の修復を計画しました。この動きは地元の名士の間に広まり、最終的には神奈川県知事や政府高官、イギリス大使らの賛同を得て、明治後期から大正にかけて、史跡として整備されました。
しかし、この当時の「安針塚」はまだ公園と呼べるような場所ではなかったようで、1908年(明治41年)に発行された地誌「三浦繁昌記」には、横須賀市内には公園と呼べる場所はないということや、逸見の「安針塚」を大規模な公園とする計画があるものの、完成予定は未定であることが書かれています。
1921年(大正10年)には、現在のJR横須賀線の横須賀駅前や京急線逸見駅近くの安針塚登り口などに、「安針塚への道標」が建てられました。現在の塚山公園の最寄り駅は京急線の安針塚駅か逸見駅ですが、どちらの駅も昭和に入ってから開業した駅のため、大正時代は国鉄横須賀駅(現在のJR横須賀駅)が最寄り駅でした。
この「安針塚への道標」には日本語表記の他に英語で「WILLIAM ADAMS TOMB ○M(マイル)」と刻まれていて、大正時代には外国人の観光地だったことが分かります。
その後、第二次世界大戦をはさみ「安針塚」は再び荒廃が進んでいましたが、1957年(昭和32年)に神奈川県立の都市公園となり、「県立塚山公園」として地元の町ぐるみで整備されていくことになります。
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初夏の園内を彩るあじさい
初夏の県立塚山公園では、あじさいが園内を華やかに彩ります。園路沿いを中心に、園内の各所で見られます。
起伏に富んだ塚山公園で見られるあじさいは、見上げるような場所にあったりするのもおもしろいです。
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イチョウやモミジ、桜の色とりどりの紅葉
県立塚山公園は桜の名所として知られていますが、秋の紅葉もキレイです。三浦按針夫妻の墓の前でイチョウを、見晴台の近くでモミジを楽しめます。もちろん、園内で圧倒的に多く植えられている桜の木の紅葉も見ごたえがあります。
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港の見える丘など数多くあるビュースポット
小高い山にある県立塚山公園には、いくつもの展望台があり、横須賀港や東京湾を中心に、すばらしい眺めを見ることができます。
とくに海上自衛隊の横須賀本港・吉倉桟橋を眼下に望むことができる場所のため、船舶好きの方やミリタリーファンの方にオススメです。
かつての浦賀道最大の難所
かつての東海道の脇街道の一つである「東回り浦賀道」(江戸などから三浦半島の東京湾側を通って浦賀奉行所に向かうルート)は現在の県立塚山公園内を通っていました。
近くの十三峠をはじめ、急なアップダウンが続くこの付近は「東回り浦賀道」最大の難関として知られていた場所で、ここを避けたいがために、相模湾側から三浦半島を横断して浦賀に通じる「西回り浦賀道」のほうが主流だったと言われています。
県立塚山公園の最寄り駅は京急線の安針塚駅と逸見駅ですが、十三峠経由でJR田浦駅へ抜けることもできます。
また、駅とは反対側に向かって公園がある山を下りて行くと、横須賀しょうぶ園や大楠山、三浦アルプス(二子山山系)へ進むルートもあります。