衣笠神社は、「日本さくらの名所100選」に選定されている横須賀屈指の桜の名所・衣笠山公園の入口にあたる衣笠山の中腹に鎮座する、衣笠村の旧村社です。
1889年(明治22年)の町村制施行によって誕生した衣笠村の各字(当時の衣笠村の大字は、衣笠・大矢部・小矢部・森崎・金谷・平作)には29社の神社がありましたが、国の神社合祀の政策(一村一社の令)により、1912年(明治45年/大正元年)に小矢部の村社・皇大神社へ合併し、1913年(大正2年)には皇大神社を「衣笠神社」と改称して、現在地に遷座しました。
このとき、社殿や鳥居、狛犬、灯籠、手水舎などはすべて、各字の神社より持ち寄り、衣笠神社に移されました。
主祭神 | 大日霊貴尊 |
旧社格等 | 村社 |
創建 | 1913年(大正2年) ※衣笠神社と改称した年 |
祭礼 | 1月1日 新年祭 4月第1日曜日 春季例大祭 7月第4土曜日 夏季例大祭 11月第4日曜日 秋季例大祭 ※実際の日にちは異なる場合があります |
衣笠神社は、旧衣笠村から6社、旧大矢部村から6社、旧小矢部村から3社、旧森崎村から2社、旧金谷村から2社、旧平作村から10社の、衣笠村の合計29もの神社が合併してできた神社です。(明治期の衣笠村の神社一覧は後述します)
これだけ多くの神様が合祀してしまうと、たとえば、衣笠にはかかせない三浦一族ゆかりの神社など、地域の特色が見えにくくなってしまいますが、戦後は衣笠神社から遠方の地域の神様はもとの遷座地に復帰しています。
29柱もの神様が鎮座していた明治期の衣笠村
1879年(明治12年)から1920年(大正9年)にかけて神奈川県がまとめた「明治12年 神社明細帳(三浦郡)」等によると、衣笠神社に合祀される前の衣笠村には、以下の29社(旧大矢部村の皇太神社と八雲神社をあわせて1社とカウントすると、28社)の神社が鎮座していました。
どこの土地でもたいてい同じことが言えますが、実にバラエティー豊かな神様が鎮座していました。
三浦義村(旧大矢部村の近殿社)や和田義盛(旧平作村(現在の池上)の白髪社。義盛の本拠地は現在の三浦市初声町和田)を主祭神として祀る神社があるのが、三浦一族ゆかりの衣笠らしいと言えます。
この他に、三浦一族の本拠地だった衣笠城跡に鎮座する蔵王社(旧衣笠村)には、三浦義明を主祭神とする御霊社が合祀されていました。
神社名 | 主祭神 | 鎮座地 (1889年(明治22年)以前) | 旧社格 |
---|---|---|---|
近殿社 | 三浦駿河守義村 | 大矢部村字池田 | 村社 |
皇太神社 八雲神社 | 天照太神 素盞鳴尊 | 大矢部村字高部 | |
貴船社 | 日本武尊 | 大矢部村字猿子畑 | |
山頂神社 | 八衢比古神 | 大矢部村字猿子畑 | |
熊野社 | 速玉神 | 大矢部村字山六 | |
蔵王社 | 日本武尊 | 衣笠村字坂台 | 村社 |
第六天社 | 大山祇命 | 衣笠村字坂口 | |
神明社 | 大日霊貴尊 | 衣笠村字竹ノ上 | |
稲荷社 | 稲倉魂命 | 衣笠村字坂口 | |
住吉神社 | 大巳貴命 | 衣笠村字住吉 | |
皇太神社 | 大日昊貴尊 | 衣笠村字城山 | 村社 |
冽ノ宮 | 須勢理昆売神 | 小矢部村字若芽 | |
山王社 | 大山祇神 | 小矢部村字宮郷前 | |
熊野社 | 速玉神 | 小矢部村字蛭畑 | |
御嶽社 | 天香御山命 | 森崎村字石田 | |
鹿嶋社 | 武甕槌神 | 森崎村久称合 | 村社 |
御嶽社 | 天香御山命 | 金谷村字谷戸ノ谷 | |
稲荷社 | 稲倉魂命 | 金谷村字石田 | |
皇太神社 | 大日昊貴尊 | 平作村字陣ケ原 | 村社 |
貴船神社 | 日本武尊 | 平作村字広尾 | 村社 |
稲荷社 | 稲倉魂命 | 平作村字栄地谷 | |
聖真子社 | 穂別命 | 平作村字竹林 | |
御嶽社 | 天香護山命 | 平作村字石井 | |
白山社 | 白川北売命 | 平作村字石井 | |
諏訪社 | 建御名方命 | 平作村字阿部倉 | |
諏訪社 | 建御名方命 | 平作村字伝馬場 | |
八雲社 | 素盞鳴尊 | 平作村字谷前 | |
白髪社 | 和田義盛 | 平作村字寺分 |
※当時の平作村には、現在の池上と阿部倉も含まれています。
戦後は神様が減った衣笠神社
第二次世界大戦後は、小矢部などの衣笠神社周辺を除いて、大矢部・森崎・平作・阿部倉・池上の住人にとって衣笠山は遠隔で参拝に不便なため、大矢部の鎮守・近殿神社など、各町に復祀されて神社が再建されました。
衣笠神社への合併当時とまちの区分けが変わっていたり、旧森崎村の神社のように横須賀線の用地となったためかつての遷座地がすでに失われてしまっていた例もあり、復祀後の神社はある程度まとまった単位での再建になることが多かったようです。
現在の衣笠神社は、合祀元となった旧衣笠村の村社・皇太神社と同じ大日霊貴尊を主祭神として祀り、小矢部・衣笠栄町・金谷・衣笠町が氏子区域となっています。
また、衣笠神社には、山王森大神、稲荷社、伊勢宮といった境内社が鎮座しています。