野比の白髭神社は、東京湾に面した野比海岸近くに鎮座する古社です。周辺は、昭和後期まで自然が多く残る地域でしたが、急速に宅地開発が行われ、現在は、白髭神社とその裏山である富塚山だけがポツリと取り残されたように、自然の景観を保っています。
神社創建の詳細は残っていませんが、野比沖を通り、浦賀へ入港する船が千駄ヶ崎(野比と久里浜を隔てる岬で、現在のJERA横須賀火力発電所(以前の東京電力横須賀火力発電所)がある辺り)で遭難することが多くあったため、この土地の村人が海上安全を願って、かつて「とがさん」と呼ばれていた、今の富塚山の山上に猿田彦神を勧請したのが白髭神社のはじまりと伝えられています。
江戸時代前期の1631年(寛永8年)には、菱沼氏によって、山上から富塚山南麓に遷座され、現在の場所に社殿を築かれたと記録されています。
1908年(明治41年)には、一村一社政策により、野比村内の、稲荷社・天神社・諏訪神社・貴船神社・子神社・水神社・神明社を合祀しています。
主祭神 | 猿田彦神 |
旧社格等 | 村社 |
創建 | 不詳 ※江戸時代前期以前 |
祭礼 | 7月15日に近い日曜日 例大祭 ※実際の日にちは異なる場合があります |
神奈川県指定天然記念物「白髭神社の社叢林」
白髭神社の裏山・富塚山は、そのこんもりと盛り上がった特徴的な姿から、通称「おむすび山」とも呼ばれています。この山には、スダジイ林を中心に、ヤブツバキやシロダモ、ヤブニッケイなどの樹木が見られ、山全体が常緑広葉樹林となっています。神奈川県の沿岸部では典型的な自然環境ではありますが、それも現代では、開発によって貴重なものになってきています。
このような伝統的な自然環境を保護する目的で、1976年(昭和51年)、「白髭神社の社叢林」として神奈川県の天然記念物に指定されました。
近隣の野比東小学校は1996年の開校で、横須賀市立の小学校の中ではもっとも新しい学校の一つです(統廃合をともなわない、もっとも新しい横須賀市立の小学校は、2003年に開校した大塚台小学校)。
白髭神社より海岸側には古くから集落がありましたが、内陸側は比較的新しく開発された住宅地です。神奈川県指定天然記念物になって以降も周囲の開発はますます進んで行きましたが、古くから住民によって護られてきた神域だけは、現在も変わらずに保護され続けています。
白髭神社のパワースポット「龍の見える所」
白髭神社の境内の一角には、「龍の見える所」と書かれた案内板と、そこに立つように促す足型が置かれています。この不思議スポットの指示に恐る恐る従うと・・・本殿の屋根の上に龍が刻まれた漆喰の彫刻が目に飛び込んできます。社殿の前方からでは、拝殿の屋根の陰に隠れて見えないため、この「龍の見える所」は絶妙な場所に設置されている、白髭神社のパワースポットです。
白髭神社のその他の不思議スポット
白髭神社にはまだまだ不思議スポットがあります。案内板などの説明がないため詳細は分かりませんが、いずれも、大正~昭和期に設置されたものと考えられます。
いかりと思われる奉納物
白髭神社の由緒にあるように、海上安全を祈願して奉納されたものかもしれません。
「在郷軍人」と刻まれた奉納物の遺構
日露戦争などの従軍や戦勝記念のものか、第二次世界大戦時のローカルな国威発揚のためのものか、戦没者への慰霊のためのものか、詳細は分かりませんが、おそらく、元は違う姿だったものと考えられます。
白髭神社の境内社「稲荷社」
白髭神社には、境内社として稲荷社が鎮座しています。