長い間「中央公園」として市民に親しまれてきた公園が、2021年4月に「平和中央公園」としてリニューアルしました。直線を基調とした幾何学的だった園内は、円をモチーフにした有機的な印象の公園に様変わりしています。
もともと猿島などの東京湾の眺望が見どころの公園でしたが、景色をさえぎっていた植栽が植え替えられてきれいに整理されたことによって、より眺望が開けた公園になりました。
また、丘の上の公園のため段差が多い公園でしたが、スロープが張りめぐらされて、バリアフリーにも配慮したつくりになりました。
「中央公園」は旧日本軍の米ヶ濱(米ヶ浜)砲台跡に造られた公園でしたが、「平和中央公園」にリニューアルするにあたって、2019年と2020年に砲台跡の発掘調査が行われました。
その後、遺構保存のために埋め戻されましたが、一部の遺構は公園内や隣接する横須賀市自然・人文博物館で見ることができます。
海沿いのうみかぜ公園とともに、「よこすか開国祭 開国花火大会」(新型コロナウィルスや東京オリンピック・パラリンピック開催準備などの影響で2020年と2021年は中止)の鑑賞スポットとして人気でしたが、今回のリニューアルで眺望が開けたことによって、より花火が見やすい場所になったと思います。
INDEX
都市と海の眺望が素晴らしい公園
海を望む高台にある公園のため、展望広場や芝生広場、平和のモニュメントがある丘など、眺望をたのしめる場所はたくさんあります。
横須賀の市街地に近いロケーションのため、都市と海の組み合わせの景色を見られるのが特徴です。また、海に目を向けると必ず視界に入ってくる猿島も良いアクセントになっています。
東京湾でもっとも幅が狭まっている浦賀水道は、横須賀港から出る自衛隊や米軍の艦船も合流して一層密度を増します。平和中央公園からは、それらのいろいろな種類の船を眺めることができます。
海とは反対の方向に目を移せば、公園内でもっとも高台にある平和モニュメントや展望広場からは、頂の部分だけですが、富士山を見ることもできます。
平和のモニュメントがリニューアル!
平和中央公園へのリニューアルでは、旧中央公園の象徴であった平和のモニュメントもリニューアルされて、旧平和のモニュメント「ヘイワオーキクナーレ」は撤去されています。
新しい平和のモニュメント「平和の軸」
新しい平和のモニュメントは「平和の軸」と名付けられていて、日が暮れると夜空に向かって光が照射されます。(後述の点灯日についての説明もあわせてご覧ください)
昼間は、モニュメント上部の屋根に開けられた穴から、無数の光の円が地面に降り注ぎます。
中央公園のシンボルだった「ヘイワオーキクナーレ」
旧モニュメントは、京急線の県立大学駅付近の車内から見えたり、市内の遠くからでもそこに平和モニュメントや中央公園があると識別できるようなものでしたが、新しいモニュメントもまた違ったかたちで市民に親しまれていくものになっていくのでしょう。
平和モニュメント「平和の軸」の夜間ライトアップ
上空照射は特定日のみライトアップ
新しい平和のモニュメント「平和の軸」が点灯すると、上空照射日には、夜空に向かって一直線の青い光のタワーがそびえます。
平和中央公園からだけでなく、横須賀中央周辺はもちろんのこと、横須賀市の東京湾側であればかなり広い範囲で見ることができると思います。
横須賀中央の方に青い光のタワーを見つけたら、一人ひとり、思いおもいの、「平和」であり続けるためにできることを考えてみるのも良いかもしれませんね。
下部の文字演出は毎日ライトアップ
毎日点灯される下部の文字演出も、モニュメントに刻まれた世界各国の言語による「平和」という文字が床に投影されて、とても幻想的な空間になっています。
平和中央公園からの夜景
東京湾を望む高台にあって、眺望に優れた平和中央公園は、平和モニュメントのライトアップだけではなく夜景もとてもキレイです。古くから三浦半島一の繁華街として栄えていた横須賀の中心市街地方面から、平成に入ってから開発された平成町方面まで、一望できます。横須賀の中心市街地方面の先には、小さいながらも、横浜みなとみらいや東京スカイツリーも確認することができます。
平和中央公園の季節の花々
平和中央公園では、梅や桜、つつじなど、季節の花々をたのしむことができます。
植栽の多くが一新されたことで若木が多いですが、とくに若いお子さんを持つファミリーなどは、ともに育っていく姿をたのしめると思います。
梅
リニューアルによって若木が多くなった平和中央公園の中では、横須賀市自然・人文博物館側の斜面で植栽されている梅の木は、貴重な古木と言えます。
あたみ桜
あたみ桜は、早咲きの桜として知られる河津桜よりさらに早い時期に咲くことが多い桜です。平和中央公園のあたみ桜はまだ若木ですが、しっかりと花をつかせていました。
河津桜
平和中央公園の河津桜も、リニューアル後に植栽されたものです。周辺の学校の児童による記念植樹によって植えられたものが多いようです。まだまだ若い木ですので、これからの生育がたのしみです。
ツツジ
横須賀市自然・人文博物館の横から平和モニュメントに登っていく階段脇には、とても鮮やかな赤い小さな花を咲かせるつつじが植えられていて、新しい平和モニュメントへのアプローチにふさわしい高揚感を与えてくれます。(平和モニュメントに登っていく階段脇のつつじは、2021年は4月中旬に満開)
東京湾要塞・米ヶ濱砲台跡の遺構
米ヶ濱砲台は、1890年(明治23年)からその翌年にかけて建設された、旧日本陸軍の砲台です。観音崎砲台や猿島砲台などともに、横須賀軍港や東京湾への侵入を防ぐことを目的とした東京湾要塞を構成する砲台の一つでした。
平和中央公園へのリニューアルでは、この米ヶ濱砲台跡の遺構の一部を公園内で見られるように整備されています。
弾薬庫の中は、格子状の扉越しにのぞくことができるようになっています。その上部にある展望広場の裏には、換気口も残っています。
米ヶ濱(米ヶ浜)という地名は、「米が浜通」として現在も横須賀中央駅近くに残っていますが、「浜」と付くその名前のとおり、かつての海岸線は現在よりもかなり内陸にありました。
明治期からこのあたりは徐々に埋め立てられていき、近年では昭和後期から平成にかけて安浦町沖が埋め立てられて(現在の横須賀市平成町)、さらに都市化が進んだでビルが立ち並んだことによって、今では米ヶ濱砲台があった場所から海岸線は陸と海の境を確認できないほど遠のいています。
東京湾要塞の他の砲台跡に比べても、もっとも周辺環境の変化が激しい場所の一つです。
所狭しと張りめぐらされたスロープ
平和中央公園へのリニューアルでもっとも変わった部分の一つが導線で、バリアフリーに配慮したつくりになっています。そこまで広くない敷地にもかかわらず起伏がある公園のため、傾斜の角度をなるべくゆるやかにするためもあってか、いたるところにスロープが張りめぐらされているように見えるのが印象的です。
平和モニュメントに続くスロープや階段の下には遊具広場があって、小さな子どもたちのためのアスレチック遊具などが設置されています。
旧中央公園にあった記念碑や胸像も健在
もちろん、すべてが一新されたわけではなく、場所こそ変わっているものもありますが、以前の中央公園にあった戦没者慰霊塔やデッカー司令官(の胸像)なども健在です。
戦没者慰霊塔
デッカー司令官胸像
ベントン・W・デッカー司令官は、終戦後の1946年(昭和21年)4月、横須賀米国海軍基地司令官に着任しました。以降4年間に渡って、軍都であった横須賀の戦後の民主的な復興に尽力されました。後にその実績は、「黒船の再来」や「第二の開国」などとも評されています。
この胸像は、その功績をたたえるため、1949年(昭和24年)11月に、横須賀商工会議所が市役所前公園に建立したものです。1995年に、市役所前公園の地下駐車場を建設する際、当時の中央公園に移設されました。
2021年4月に中央公園が平和中央公園にリニューアルした際には、公園内での移動があり、現在の場所に落ち着いています。