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新善光寺 | 鎌倉・名越で創建された源頼朝ゆかりの仏様を祀る葉山・上山口の古刹

新善光寺・境内(撮影日:2021.02.03) 葉山
新善光寺・境内(撮影日:2021.02.03)

新善光寺しんぜんこうじは、葉山・上山口にある浄土宗の寺院です。もとは鎌倉・名越弁ヶ谷べんがやつにありましたが、天正年間(安土桃山時代)に現在地へ移転してきています。
新善光寺本堂四脚門は、室町後期から江戸初期の禅宗様の特徴が見られ、葉山へ移転してきた当初の姿を留めている貴重な建築です。

新善光寺」という寺名は、もちろん信濃(長野県)の善光寺に由来します。善光寺信仰が広まるにつれて、善光寺本尊の分身仏を祀る寺院が全国各地に建立されていきましたが、それらの寺院に「新善光寺」という寺名が多く付けられました。

葉山の新善光寺もその一つで、諸説ありますが、鎌倉幕府初代執権・北条時政名越の屋敷源頼朝が信濃・善光寺より請来した善光寺如来の分身仏を祀り、後にその近くに堂宇を建立したのがはじまりとされています。
源頼朝は火災で荒廃していた信濃・善光寺の再建を支援しました。源氏三代のあとを継いで鎌倉幕府の最高権力者となった北条氏もまたそれを引き継ぎ、善光寺をあつく信仰したと言います。

山号不捨山
宗派浄土宗
寺格
本尊善光寺式阿弥陀三尊
創建不詳(鎌倉時代前期)
中興:天正年間(安土桃山時代)
開山不詳
中興:密道
開基不詳(北条朝時、北条泰時など諸説あり)

新善光寺はそこまで知名度が高い寺院ではありませんが、以下のとおり、葉山でも有数の文化財の宝庫です。

  • 神奈川県指定重要文化財
    • 建造物「新善光寺四脚門
    • 建造物「新善光寺本堂附厨子
  • 葉山町指定重要文化財
    • 建造物「唐木作の庚申塔
    • 彫刻「室内庚申塔
    • 彫刻「阿弥陀三尊立像
    • 天然記念物「新善光寺常緑樹林
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北条氏ゆかりの名越・弁ヶ谷に創建された新善光寺

葉山・上山口に移転する以前の新善光寺は、鎌倉の名越にあったとされています。近年(2000年代以降)の鎌倉市による発掘調査から、より具体的な場所も推定されるようになってきていて、鎌倉での新善光寺弁ヶ谷(現在の鎌倉市材木座4丁目付近)にあったと見られています。弁ヶ谷は、浄土宗大本山であり新善光寺とは本寺・末寺の関係であった光明寺の北側、松葉ヶ谷長勝寺の裏山を越えた南側に位置しています。

新善光寺が葉山に移転した安土桃山時代の鎌倉は、鎌倉幕府滅亡から200年以上、室町幕府による鎌倉府(鎌倉公方)の崩壊からも100年以上が経っていて、都市としての機能はほとんど失われていたと見られます。また、後北条氏小田原合戦に敗れ、徳川家康が国替えとなり入国してくるなど、関東は混乱期を迎えていました。
このように、援助を期待できる権力者も定まらず、人口も減少していく中では、寺院の存続は厳しく、新善光寺のように新天地を得られた寺院はまだ良いほうで、かなりの数の寺院が廃寺に追い込まれたと考えられます。
なお、横須賀・野比最宝寺と三浦・白石町最福寺も、もとは新善光寺と同じ弁ヶ谷にありましたが、鎌倉幕府滅亡以降に移転しました。

弁ヶ谷には、「名越邸名越亭)」や「名越御館」、「名越山荘」などと呼ばれた、鎌倉幕府初代執権・北条時政名越殿という別称もあり)やその孫・北条朝時を祖とする氏族・名越流北条氏の屋敷があったと推定されています。
近世・近代までの旧地名から、「名越」とは、現在の鎌倉市大町の中央から東部にかけてと名越切通を越えた先の逗子市の一部を指すのが一般的です。弁ヶ谷は、それよりもやや南側に位置しています。
しかし、鎌倉時代の歴史書「吾妻鏡」では「名越御館(浜の御所)」<建久三年(1192)七月大十八日の条>や「名越山荘(新善光寺辺り)」<正嘉二年(1258)五月小五日の条>などという記述が見られることから、中世の「名越」はより南側に広い範囲を含む地名だったと考えられます。「浜の御所」と言う名称からは、海に近い材木座のあたりを連想できます。(ただし、「名越御館」や「名越山荘」がすべて同一の場所という確証はありません)

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室町期から江戸初期の禅宗様の特徴が見られる本堂と四脚門

新善光寺・本堂(撮影日:2021.02.03)
新善光寺・本堂(撮影日:2021.02.03)

新善光寺本堂四脚門は江戸時代初期の建立と見られていて、安土桃山時代に葉山へ移転してきてから数十年かけて整備された堂宇の姿ほぼそのままを、現在も目にすることができます(屋根は、昭和後期に、茅葺から銅板葺に改修されています)。ともに室町期から江戸初期にかけての禅宗様の特徴が見られる貴重な建築で、神奈川県の重要文化財に指定されています。

本堂は、外観こそ禅宗様は薄めですが、内陣外陣脇陣等にその特徴が見られます。源頼朝北条氏ゆかりの本尊が安置されている厨子は、江戸時代後期の1797年(寛政9年)に建立されたもので、こちらも禅宗様が用いられています。

四脚門にかかる「不捨山」の扁額は、大正から昭和にかけて活躍した浮世絵師・日本画家の伊東深水によるものです。

新善光寺・四脚門(撮影日:2021.02.03)
新善光寺・四脚門(撮影日:2021.02.03)
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その他の新善光寺境内の見どころ

鐘楼

新善光寺・鐘楼(撮影日:2021.02.03)
新善光寺・鐘楼(撮影日:2021.02.03)

六地蔵

新善光寺・六地蔵(撮影日:2021.02.03)
新善光寺・六地蔵(撮影日:2021.02.03)

ユニークなお地蔵様や仏像

新善光寺・ペンギン地蔵(撮影日:2021.02.03)
新善光寺・ペンギン地蔵(撮影日:2021.02.03)

新善光寺の境内には、ユニークなお地蔵様や仏像が数多く安置されています。

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新善光寺周辺の見どころ

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DATA

住所 三浦郡葉山町上山口1368
アクセス
行き方

JR横須賀線・湘南新宿ライン「逗子駅」または京急逗子線「逗子・葉山駅(南口)」より京急バス「湘南国際村センター前(葉山大道経由)」行きまたは「衣笠駅」行きにて「滝の坂」下車、徒歩約1分

駐車場 あり
料金

無料(志納)

電話番号 046-878-8154
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