神奈川県立観音崎公園は、東京湾の浦賀水道に突き出た、海に囲まれた公園です。園内は緑が多く、とても広いため、ハイキングも楽しめます。
観音崎には終戦後も砲台跡などが残されていましたが、1975年(昭和50年)に県立公園として整備されました。県立観音崎公園は神奈川県最大の県立公園となっています。
また、県立観音崎公園は、アジサイやスイセンなどの花の名所であり、とくにガクアジサイは「かながわの花の名所100選」に選ばれています。近年では花の広場の河津桜が育ってきていて、横須賀最大の河津桜の名所でもあります。
観音崎砲台跡は、東京湾要塞の遺跡として良好に姿をとどめているため、2016年に日本遺産「鎮守府横須賀・呉・佐世保・舞鶴~日本近代化の躍動を体感できるまち~」の構成文化財の一つとして認定されました。
観音崎は「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」(改訂第3版)で一つ星(「興味深い」という評価)を獲得しています。海と山の自然を純粋にたのしめるのはもちろんのこと、近代化遺産としての東京湾要塞跡も見ごたえがあります。
県立観音崎公園内の高台に建つ観音埼灯台は、日本初の洋式灯台です。
INDEX
磯遊びやボードウォークで散策を楽しめる 観音崎海岸
県立観音崎公園の周囲の海岸は、砂浜は少なく、レストハウス(観音崎バス停付近)や第1・第2駐車場近くの観音崎園地の前やたたら浜周辺にあるくらいです。海水浴場も開設されません。
その代わり、岩礁が豊富にあるため、磯遊びをたのしむことができます。
観音崎園地にはBBQ指定エリアが用意されていて、海を眺めながら、無料でバーベキューをたのしむことができます。事前予約も必要ありません。
(この他にたたら浜園地には有料のバーベキュー施設があります。県立観音崎公園では、これらの2か所以外の場所でバーベキューをすることは禁止されています)
2024年海水浴場 | × 観音崎海岸は海水浴場ではありません |
2024年海の家開設 | × |
公衆トイレ | 〇 |
駐車場 | 〇(下記DATA欄参照) |
また、北側の走水方面(横須賀美術館や旧観音崎京急ホテル方面)には、走水観音崎遊歩道(走水観音崎ボードウォーク)が整備されていて、海岸沿いを快適に散策できるようになっています。
以下のリンク先から他の【ビーチ】もご覧ください!!
かながわの花の名所100選に選ばれている ガクアジサイ
観音崎などの三浦半島に自生するガクアジサイ
県立観音崎公園のガクアジサイは、「かながわの花の名所100選」に選ばれています。ガクアジサイは、観音崎がある三浦半島などの太平洋沿いの海岸近くに自生するあじさいです。
レストハウスや第1・第2駐車場の近くの観音崎園地の山の斜面や園路沿いで多く見られます。例年見ごろは6月上旬から下旬にかけてです。
観音崎公園オリジナルのアジサイ「汐音(しおん)」
レストハウスや第1・第2駐車場から少したたら浜方面に進んだ、トンネルの手前にある観音崎公園パークセンターでは、県立観音崎公園オリジナルのアジサイ「汐音」も育てられています。
三軒家園地や横須賀美術館などでも見られるあじさい
あじさいは、他にも公園内の三軒家園地や花の広場、横須賀美術館などいろいろな場所で見ることができます。
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水仙は観音崎公園の冬の風物詩
冬の県立観音崎公園のおたのしみは、海辺で潮風に揺れるスイセンです。観音崎自然博物館やたたら浜園地周辺では、例年1月から2月にかけて、スイセンの群集がいっせいに花を咲かせます。
アジサイと同じように、スイセンも県立観音崎公園のいろいろな場所で見ることができます。
春を中心にいろいろな花々を楽しめる 花の広場
県立観音崎公園の山の上に広がる花の広場では、桜や菜の花、チューリップなど、早春~春に見ごろを迎える花を中心にたのしめます。とくに、桜は、河津桜や陽光桜、オオシマザクラなど、いろいろな種類が植栽されていて、例年、2月中旬ごろから4月初旬ごろまで、桜の開花リレーを見ることができます。
花の広場は、県立観音崎公園の園内にいくつか点在する芝生広場の中でも、もっとも広い場所になります。
花の広場は県立観音崎公園の南端に位置していて、観音崎園地や観音崎バス停などがある公園の中心地からは少し離れています。花の広場を目的に訪れる場合は、堀田バス停が最寄りのバス停になります。
県立観音崎公園としての駐車場ではありませんが、鴨居3丁目公園側の隣接地に駐車場もあります。
河津桜(カワヅザクラ)
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菜の花(ナノハナ)
陽光桜(ヨウコウザクラ)
オオシマザクラ
観音崎パークセンターの春めき桜と横須賀美術館のソメイヨシノ
その他、観音崎パークセンターでは春めき桜を、県立観音崎公園内にある横須賀美術館ではソメイヨシノを、たのしむことができます。
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チューリップ
子ども向け遊具のある ふれあいの森
花の広場から走水方面の森は「ふれあいの森」と名付けられています。県立観音崎公園は海沿いに人気スポットが多いため、ふれあいの森は穴場スポットと言えます。休日でも人込みを避けて、静かに森の散策をたのしめます。
ふれあいの森の中心施設と言える森のロッジは山小屋風の無料の休憩施設で、公衆トイレや飲み物の自動販売機などもあります。
森のロッジの隣りには、子どもたちが自然のなかの遊具で存分に身体を動かせるアスレチックの森があります。
走水展望広場
森のロッジ
アスレチックの森
東京湾要塞の跡に造られた観音崎公園
東京湾(浦賀水道)の入口にあたる観音崎は、江戸時代から軍事上重要な場所でした。
とくに明治時代には旧日本陸軍が要塞化して、数多くの砲台や弾薬庫などが造られました。1884年(明治17年)に完成した観音崎第一砲台・第二砲台は、西洋の技術を取り入れた日本初の砲台でした。
これらの砲台跡を整備して造られた県立観音崎公園には、現在でもその多くの遺構を見ることができます。当然兵器などは残っていませんが、明治期に当時国内の最先端の技術で造られたレンガ積みの建造物などは、たっぷりと見ごたえがあります。
第一砲台(北門第一砲台)跡
西洋の技術を取り入れた日本初の砲台です。観音埼灯台が建っている丘の南側の下部に位置しています。第一砲台には二つの砲座があり、その間はレンガ造の短いトンネルで結ばれています。
第二砲台(北門第二砲台)跡
第二砲台も第一砲台と同じ時期に造られた、西洋の技術を取り入れた日本初の砲台です。現在の東京湾海上交通センターの近くにあります。
海の見晴らし台(第三砲台跡)
現在では、海に面した高台にいくつものビュースポットが整備されていて、東京湾を行き交う船舶を眺めることができます。このような場所の多くは、明治期から大正または第二次世界大戦終戦まで砲台が設置されていた場所になります。
展望園地(南門砲台跡)
観音崎自然博物館の東側に広がる、海に面した芝生広場も、かつての砲台跡です。この展望園地には、芝生の中に砲座の跡が残されています。
戦没船員の碑(大浦堡塁跡)
戦争では、軍人ではない数多くの民間人も巻き込まれて、海で命を落としました。戦没船員の碑は、そのような民間船員を悼み、二度と戦火のない平和を祈念するために、公益財団法人殉職船員顕彰会が建立しました。天皇陛下をはじめ皇族の方々も、たびたび、慰霊のために碑を訪れています。
ここは大浦堡塁の跡地ですが、その遺構はほとんど残っていません。
うみの子とりで(腰越堡塁跡)
アスレチック遊具などがあり、子どもたちの遊び場になっているうみの子とりでも、かつての腰越堡塁跡です。近年つくられたレンガ模様の遊具と、腰越堡塁として使われていた明治期のレンガ造の建造物が、混在しています。
三軒家園地(三軒家砲台跡)
三軒家園地は、横須賀美術館の裏手から登るとすぐの場所にある芝生広場です。海への眺望が良い場所ですが、この背後には三軒家砲台跡の遺構が残されていて、こちらも見ごたえがあります。
貴重なレンガ造りや素掘りのトンネル、切通
要塞化にあたって、砲台やその関連施設を行き来するために、観音崎の山の中には数多くのトンネルや切通が整備されました。当時最新の技術を用いたレンガ積みのものから、素掘りのものまで、バリエーションに富んでいます。なかには、トンネルの中に弾薬庫が設けられていたトンネルもあります。
観音崎で見られるレンガ積みには、フランス積みとイギリス積みがあります。
当時技術的な支援を仰いだ国の影響によって、明治20年ごろを境に、それよりも前の建造物はフランス積みで、それよりも後のものはイギリス積みで造られています。積み方を理解すると、造られたおおよその時期もわかります。
- フランス積みは、レンガの長い面と短い面が一段のなかで横方向に交互に、かつ一段ごとに縦方向にも交互に表われるように積む方式です。
- イギリス積みは、レンガの長い面だけの段と短い面だけの段が交互に表われるように積む方式です。イギリス積みのほうが、丈夫で経済的と言われています。
復元された観音寺の観音像が安置されている 海岸園地
観音崎の地名の由来
「観音崎」という地名は、奈良時代の高僧・行基が船の安全のための観音像をこの地の海蝕洞穴に納めたことに由来すると伝えられています。江戸時代には観音寺が創建されて、このあたりは大いに賑わったと言われています。
明治時代になって観音崎に砲台が建設されて要塞化されると、観音寺は鴨居の亀崎に移転することを余儀なくされました。鴨居・亀崎の地でも信仰を集めていた観音像ですが、1986年(昭和61年)に発生した火災によって、観音像も観音寺も焼失してしまいました。
しかし、2018年に発足した観音像復元プロジェクトによって、翌2019年、約140年ぶりに観音崎の地に観音像が復元されました。復元された観音像は、海岸園地の海蝕洞穴の前に安置されています。
海岸園地
海岸園地は観音埼灯台の北側の海辺にある、東京湾の眺望が良い広場ですが、灯台を見上げるように見ることができる場所でもあります。海上からの見通しが良い観音埼灯台ですが、地上側から見渡せる場所はそれほど多くないです。
(レストハウス近くの観音崎園地や走水観音崎遊歩道(走水観音崎ボードウォーク)方面から山の上に見える白い塔は、海上保安庁東京湾海上交通センターです)
観音崎は今も昔も海上交通の要衝
東京湾(浦賀水道)の入口にあたる観音崎には、敵を攻撃するための施設ばかりではなく、海上交通の要衝としての機能も造られました。
観音埼灯台や海上保安庁東京湾海上交通センターがそれで、これらは現在も現役です。
神奈川県立観音崎公園とその周辺の見どころ
神奈川県で最大の広さをほこる県立公園の県立観音崎公園には、博物館や美術館なども点在していて、たのしみ方もいっぱいあります。