スポンサーリンク

徳寿院・豊川稲荷横須賀別院 | 三笠通りのアーケードの先に残る古き横須賀

豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・山門と豊川稲荷の提灯(撮影日:2024.08.09) 横須賀
豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・山門と豊川稲荷の提灯(撮影日:2024.08.09)

徳寿院は、境内に豊川稲荷横須賀別院成田山分霊所のある、曹洞宗の寺院です。京急線の横須賀中央駅近くにある三笠ビル商店街(三笠通り)の全蓋式アーケード内に参道入口がある、めずらしいお寺です。

この参道入口の扉は、たった1枚で雰囲気を一変させる不思議な扉です。
横須賀でも屈指の賑わいを見せる商店街と断崖絶壁に建つ寺院を隔てる透明な扉は、まるで、現代と過去を行き来することのできる、SF映画でタイムトラベラーが使う秘密道具のようです。

参道入口の扉や三笠ビル商店街のアーケード内の案内板などにも大きく「豊川稲荷入口」と書かれているように、その露出度から、「徳寿院」という正式な寺名より「豊川稲荷」としての知名度のほうが圧倒的に高く、土地の人たちの豊川稲荷への信仰のあつさがうかがい知れます。
豊川稲荷は、主に商売繁盛のご利益があることで知られています。そのご利益にあやかろうと、横須賀イチの繁華街として栄えてきた横須賀下町エリアには欠かせない存在だったのでしょう。

山号豊川山
宗派曹洞宗
寺格
本尊十一面観世音菩薩
創建1897年(明治30年)
※現在地である横須賀へ移転の年
開山不詳
開基不詳

大勝利山や現在は豊川山と呼ばれるこの地には、愛知の豊川稲荷の別院となる以前から稲荷堂がありましたが、正式な別院を設けるにあたり寺が必要になったため、1897年(明治30年)に、鎌倉郡村岡村(現在の藤沢市宮前)より寺を移したと言います。(廃寺となった宮前には昭和20年代までお堂が残されていたそうですが、現在はその跡地に徳壽院跡の石碑が建立されています)

三笠ビル商店街・豊川稲荷入口(撮影日:2021.04.16)
三笠ビル商店街・豊川稲荷入口(撮影日:2021.04.16)
スポンサーリンク

かつての横須賀下町の面影を残す断崖絶壁にある境内

豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・参道を三笠ビル側から見上げる(撮影日:2024.08.09)
豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・参道を三笠ビル側から見上げる(撮影日:2024.08.09)

三笠ビル商店街(三笠通り)内にある参道入口の扉を開けて徳寿院・豊川稲荷横須賀別院の境内に入ると、断崖絶壁の崖に沿うように、長い階段が続いています。

アーケードの三笠ビル商店街やこれと並行して走るビルに囲まれた横須賀中央大通りを歩いているだけでは気づきにくいですが、横須賀中央駅がトンネルに挟まれていることからも分かる通り、通称「横須賀中央」と呼ばれている横須賀の下町エリアは山に囲まれたまちです。

明治時代初期までの横須賀下町エリアは、平地も少なく、小さな漁村に過ぎませんでした。そんな横須賀も軍港化が進むにつれて急速に都市化が進み、横須賀製鉄所(後の横須賀造船所横須賀海軍工廠。※いずれも、いわゆる「造船所」)や旧日本海軍の横須賀鎮守府が置かれた本町方面から現在の横須賀中央駅(駅の開業は1930年(昭和5年))方面に市街地が拡大していきました。

かつては、大勝利山あるいは豊川山と呼ばれた山の前方には海に突き出た岬があって、横須賀のまちを分断していました。明治期の都市化の流れでこの岬は崩されて、周辺の海も埋め立てられたためなかなか想像しにくいですが、現在の本町大滝町方面と若松町米が浜通方面の通行の利便性を高めるために、この山の中腹にはトンネルが設けられていたそうです。

このように、徳寿院・豊川稲荷横須賀別院周辺の環境は、明治期以降目まぐるしく変化していったため、今のような参道になるまでに、何度か経路の変更等があったものと考えられます。
一方で、徳寿院・豊川稲荷横須賀別院の境内は、山の存在感が強かった、明治初期までの古い横須賀下町の面影を残す、貴重な場所でもあります。

山の中腹にある徳寿院・豊川稲荷横須賀別院の境内からは、横須賀の下町エリアを一望できます。一望と言いましても、視界に入るのはビルばかりですが。これらのビルが建つ場所のほとんどは、創建当初は海の中でした。それは、さぞかし風光明媚な場所だったことでしょう。

豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・境内から下町の商店街を望む(撮影日:2024.08.09)
豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・境内から下町の商店街を望む(撮影日:2024.08.09)
スポンサーリンク

豊川吒枳尼眞天を祀る豊川稲荷横須賀別院

豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・山門(撮影日:2024.08.09)
豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・山門(撮影日:2024.08.09)

徳寿院豊川稲荷横須賀別院は、全国に5か所しか存在しない豊川稲荷の正式な別院の一つです。日本三大稲荷の一つに数えられている愛知の豊川稲荷は、正式には「妙厳寺」と言い、徳寿院と同様、曹洞宗の寺院です。
稲荷」と言うと稲荷神社のイメージが強いものですが、豊川稲荷徳寿院をはじめとしたその分院では、稲荷神ではなく豊川吒枳尼眞天とよかわだきにしんてん荼枳尼天)を祀っています。

明治期以前の神仏習合の時代には、稲荷神荼枳尼天は同一視されていて、荼枳尼天を祀る神社や、両方を祀る神社/寺院もありました。
しかし、明治維新後の神仏分離令では、稲荷神または荼枳尼天、すなわち、神社として存続するか寺院として存続するかを迫られることとなりました。

現在の稲荷信仰は、神社としては伏見稲荷大社が総本宮、寺院としては豊川稲荷が本寺的な役割を担っています。

豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・本堂と稲荷社(撮影日:2024.08.09)
豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・本堂と稲荷社(撮影日:2024.08.09)
スポンサーリンク

三浦二十八不動尊霊場・第4番札所の成田不動尊

豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・成田不動尊(撮影日:2021.04.16)
豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・成田不動尊(撮影日:2021.04.16)

もう一つの主役である成田不動尊は、徳寿院の境内の少し奥まった場所にあります。三浦二十八不動尊霊場の第4番札所になっています。

もとは横須賀中央駅から上町方面に続く平坂の途中にあり「平坂の不動尊」などと呼ばれていましたが、1898年(明治31年)、徳寿院の境内に移されました。

スポンサーリンク

徳寿院・豊川稲荷横須賀別院境内のその他の見どころ

庭園

豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・庭園(撮影日:2021.04.16)
豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・庭園(撮影日:2021.04.16)

成田不動尊に続く参道沿いは、よくお手入れされた庭園になっています。
横須賀下町を一望できるのも、この庭園の周辺です。

稲荷社

豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・稲荷社(撮影日:2024.08.09)
豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・稲荷社(撮影日:2024.08.09)

地蔵尊

豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・地蔵尊(撮影日:2024.08.09)
豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・地蔵尊(撮影日:2024.08.09)

豊川山滝不動

豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・豊川山滝不動と崖下に並ぶ狐像(撮影日:2024.08.09)
豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・豊川山滝不動と崖下に並ぶ狐像(撮影日:2024.08.09)

徳寿院・豊川稲荷横須賀別院の所在する大滝町の名前の由来となった、大きな滝があった場所に祀られていたという石仏です。

神武天皇遥拝所

豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・神武天皇遥拝所(撮影日:2024.08.09)
豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・神武天皇遥拝所(撮影日:2024.08.09)

不動明王の石像

豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・不動明王の石像(撮影日:2024.08.09)
豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・不動明王の石像(撮影日:2024.08.09)

馬頭観音

豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・馬頭観音(撮影日:2024.08.09)
豊川稲荷横須賀別院 徳寿院・馬頭観音(撮影日:2024.08.09)
スポンサーリンク

徳寿院・豊川稲荷横須賀別院周辺の見どころ

徳寿院・豊川稲荷横須賀別院山門前から続く石段をさらに登って行くと大勝利山の山頂付近にある三叉路に突き当たります。この道は、良長院の前と上町方面を結んでいて、埋め立て前の通り抜けが困難だった時代の横須賀下町をバイパスするルートの一つとしても機能していたと考えられます。
この大勝利山の裏道は、現在でも、三笠ビル商店街(三笠通り)方面から徳寿院・豊川稲荷横須賀別院を経由して上町方面に抜ける近道として利用できます。

良長院
現在の良長院りょうちょういんは、江戸時代後期の天保年間(1831年~1845年)に、三浦半島の東京湾側に位置する旧横須賀村の中心地近く(現在の横須賀市緑が丘)に創建された寺院です。この場...
諏訪大神社
諏訪大神社(すわおおかみのやしろ/すわおおかみしゃ/すわだいじんじゃ)は、京急線の横須賀中央駅と汐入駅の間の山あいに鎮座する古社です。諏訪大神社に伝わる由緒によると、南北朝時代後期の1380年(...
ドブ板通り
ドブ板通りどぶいたどおりは、京急線の汐入駅と横須賀中央駅の横須賀市本町にある、横須賀を代表する商店街の一つです。米海軍横須賀基地(ベース)のメインゲートから最寄りにある繁華街のため、戦後はアメリカ海...
本町延命地蔵尊
本町延命地蔵尊は、ドブ板通りの京急線汐入駅寄りの道端に安置されているお地蔵様です。店舗と店舗の間に挟まれた非常に狭い敷地に、商店街に溶け込むようにありますので、気づかないで通り過ぎてしまう方も多いか...
諏訪神社[若松町]
京急線の横須賀中央駅近くに鎮座する諏訪神社は、三浦半島イチの繁華街に隣接していて、この「下町」で商売をする人たちを中心に、深く崇敬されています。そんな諏訪神社も、かつては海辺の丘に鎮座していて、...
中里神社
中里神社なかざとじんじゃは、京急線の横須賀中央駅から、いわゆる下町地区とは反対側の平坂を登り切った先の、さらに小高い丘に鎮座する神社です。明治後期に、旧中里村の鎮守だった稲荷社と、同じく旧中里村...
三笠公園
三笠公園みかさこうえんは、海に面した広い芝生広場や、大きな池や小川などからなる、水辺で過ごすのが心地よく感じる都市公園です。公園の一番奥は、米海軍横須賀基地(ベース)に隣接しています。園内に...
記念艦三笠
三笠みかさは旧日本海軍の戦艦で、1902年(明治35年)にイギリスで竣工されました。東郷平八郎が率いる連合艦隊の旗艦として、日露戦争の日本海海戦でロシア海軍のバルチック艦隊と戦い、歴史的勝利を収めた...
猿島
猿島さるしま(猿島公園)は、横須賀の中心市街地の沖合約1.7kmに浮かぶ、東京湾最大の無人の自然島です。BBQや投げ釣り、例年、夏には海水浴などをたのしむことができます。猿島には宿泊施設はなく、...
いちご よこすかポートマーケット
「いちご よこすかポートマーケット」は、横須賀新港にある、横須賀や三浦半島の飲食店やお土産物店などが集まる観光拠点です。よこすかポートマーケットは2013年にオープンしましたが、2019年に一旦閉店...
横須賀新港・東京九州フェリー横須賀フェリーターミナル
2021年7月に、横須賀と北九州・新門司を結ぶカーフェリーが新規就航しました。その横須賀側のターミナルが横須賀新港ふ頭の「東京九州フェリー横須賀フェリーターミナル」です。東京九州フェリーは最...

DATA

住所 横須賀市大滝町2-27
アクセス
行き方

京急線「横須賀中央駅」から徒歩約10分

駐車場 なし
料金

無料(志納)

電話番号 046-822-4905
ウェブサイト https://toyokawasan-tokujuin.com/
※このページに掲載している内容は、予告なく変更となっている場合があることをご了承ください。
※地図は、右上のレイヤーボタンから、「オープンストリートマップ」「地理院地図」「Google マップ」に切り替えられます。大まかな場所を知りたい場合は「Google マップ」、目的地付近の詳細な道路地図を調べたい場合は「オープンストリートマップ」または「地理院地図」を選択すると分かりやすいです。左上の縮尺ボタンとあわせてご活用ください。
error: 申し訳ありません。コピーはできません。
タイトルとURLをコピーしました