光の丘水辺公園は、YRP(横須賀リサーチパーク)造成とともにつくられた緑地公園です。それぞれ自然度の異なる「四季の池」「野鳥の池」「聖なる池」「最奥の池」という4つの人工池と湿地・緑地からなります。
YRPは、電波・情報通信技術を中心とするICT技術の研究開発拠点として、1997年に開設されました。YRPの開発では、武山丘陵から連なる丘陵地が大規模に造成され、多くの自然が失われました。光の丘水辺公園は、この開発によって失われたものを含む、三浦半島の小動物や植物の保存と復元、湿地の回復を目指し、1999年にオープンしました。
光の丘水辺公園では、これまでに、430以上の昆虫、420以上の植物、12種の爬虫類、8種の両生類、60種以上の鳥類が確認されていると言います。
光の丘水辺公園は、2013年には横須賀市によって「継承の森」に指定され、自然と触れ合うことのできるイベントや保全に関する活動などを通じて、自然の大切さを将来に継承していく活動実践の場となっています。
ボランティア団体「水辺公園友の会」と公園の指定管理者による協働で、キッズ自然教室や自然観察会、早朝探鳥会、期間限定のニリンソウやハンゲショウ群落の特別公開など、年間を通じてさまざまなイベントも開催されています。
光の丘水辺公園はゾーンによってかなり雰囲気が違いますので、イベント開催時等の、すべてのエリアに入れるときに訪れてみるのがおすすめです。

INDEX
自然度の異なる3つのゾーン

現在の光の丘水辺公園は、公園名の一部にもなっているとおり、横須賀市光の丘にあります。「光の丘」という地名は、YRP(横須賀リサーチパーク)の開発時に、「電波・情報通信技術を中心とするICT技術の研究開発拠点」をイメージする地名として名づけられたものです。
YRPの開発に際しては、環境アセスメントが実施され、自然に対するさまざまな配慮や対策が行われました。光の丘水辺公園は、この環境アセスメントを受けて、地主である京急が建設したもので、完成後、横須賀市に移管され、都市公園として開園しました。
光の丘水辺公園は、もっとも自然度の高い「聖なる池ゾーン」(最奥の池を含む)、人工的な「四季の池ゾーン」、これらの緩衝地帯の役割を持つ「野鳥の池ゾーン」の3つのゾーンに分けられています。
このうち、「四季の池ゾーン」は光の丘水辺公園の開園時間内であれば誰でも自由に入ることができるエリアです。
「野鳥の池ゾーン」は、4~10月は9:00~16:00に入園できますが、冬鳥が渡って来る11~3月はイベント開催時や利用申込みがあった場合のみ入園することができます。
もっとも自然度の高い「聖なる池ゾーン」は原則立ち入りが制限されていて、観察会などのイベント開催時や利用申込みがあった場合のみ、案内人の案内で利用することができます。


自然環境の再生や保全の場である「聖なる池ゾーン」

さまざまな植物や昆虫などが見られる湿地帯

深い緑に囲まれた聖なる池ゾーンでは、ハンゲショウ、ガマ、アシなどが群生する湿地に、カエルや水生昆虫、トンボ、サンショウウオなどの動植物が暮らしています。
通年で原則立ち入り禁止となっている聖なる池ゾーンへは、キッズ自然教室や自然観察会、早朝探鳥会、期間限定のニリンソウ群落の特別公開(例年3月下旬)やハンゲショウ群落の特別公開(例年6月下旬)などのイベント開催時にのみ入ることができます。


人為的に造られた三浦半島の動植物にとっての聖地

自然環境の再生や保全の場として、光の丘水辺公園の中核をなす聖なる池ゾーンは、一見すると「原生林」からなる「自然(wilderness)」のように見えますが、人為的に造られた「自然(nature)」です。少々乱暴な言い方をすれば、人工的な巨大ビオトープのようなものです。
YRP開発前の光の丘水辺公園は、杉釜と呼ばれていた場所にあり、この谷戸を切り崩して造成されました。
光の丘水辺公園の聖なる池は、この杉釜にあった湿地の土をそのままの状態でブロック状に切り取って保存し、杉釜の谷戸の動植物を丸ごと移植するという試みがなされました。
また、水源を確保するために、杉釜の谷戸にあった池をもとに地下ダムを造り、そこに溜まった地下水をポンプで汲み上げて最奥の池から供給するという、新たな水系も設けられました。
このように、聖なる池ゾーンは、かなり大がかりな創意工夫によって造成され、三浦半島の動植物にとって聖地となるべく場所として再生や保全がなされています。


初夏に一般公開されるハンゲショウ(半夏生)群生地
光の丘水辺公園の聖なる池のゲート近くは、ハンゲショウ(半夏生)の群生地になっています。例年、6月下旬には一般公開されています。梅雨時の蒸し暑い時期ですが、雪が積もったように薄化粧したハンゲショウは、どこか涼しげです。


野鳥が安心して生活できる環境を目指した「野鳥の池ゾーン」

野鳥と人との接触を抑えるため冬季は立ち入り制限

自然度の高い聖なる池ゾーンと人工的な四季の池ゾーンの緩衝地帯になっている野鳥の池ゾーンは、その名前のとおり、野鳥が安心して生活できる環境を目指して造られています。そのため、渡り鳥が飛来してくる冬季は立ち入りが制限されています。
野鳥の池ゾーンに入れない時期も、池の外側に設置してある目隠しから、野鳥などを観察することができるようになっています。
野鳥の池ではアシなどの植物が育ってきていて、造成当初と比較して、より野鳥が生活しやすい環境になってきているようです。
※以下の2枚の写真は、季節は異なるものの、ほぼ同じ場所から撮影した、野鳥の池の10年間の変化です。


野鳥も人も自然を満喫できる環境が整えられた野鳥の池

聖なる池ゾーンと同様に、野鳥の池ゾーンでも極力人工的なものは排除されていて、自然の環境を造りだしています。池のほとりの植物が野鳥の目隠しになることを想定してか、全体的に池の眺望はそれほど良くありません。園路沿いでは、ニリンソウなどの植物も見られます。
冬季を除いて、通常立ち入ることができるのはこの野鳥の池ゾーンまでですが、じゅうぶん自然を満喫できる環境が整えられています。
自然と気軽に触れ合える「四季の池ゾーン」
散策するのに気持ちが良い池のまわりの回遊園路

四季の池ゾーンは、市民が気軽に自然と触れ合うことができるエリアになっています。四季の池を一周する園路や展望デッキ、親水護岸などが設けられていて、散策するのに気持ちの良い環境が整っています。光の丘水辺公園の開園時間内であれば自由に利用することができます。

四季の池ではポピュラーな動植物に出会える

光の丘水辺公園は四季の池ゾーンでは、他のゾーンと一転して、比較的ポピュラーな動植物を見ることができます。春から初夏にかけては、ツツジやあじさい、ネムノキなどが四季の池周辺の園路を彩ります。




利用申請受付やイベント展示などのある管理棟

四季の池のほとりには管理棟が建っています。管理棟では、野鳥の池ゾーン(冬季)と聖なる池ゾーンの利用申請の受付や草木染作品の展示などが行われています。光の丘水辺公園唯一のトイレがあるのも、この管理棟です。
「継承の森」の理念にぴったりな光の丘水辺公園

光の丘水辺公園は、2013年に、横須賀市によって「継承の森」に指定されました。
「継承の森」とは、「みどり」や「自然」を大切に思う意識を将来へ引き継ぎ、それらを守り・育て・生かすための活動のモデル事業を実践する場、と定義されています。
一度開発によって失われた自然環境を再生・保全し、ボランティア団体「水辺公園友の会」と公園の指定管理者による協働でキッズ自然教室や自然観察会などのイベントが年間を通して数多く開催されている光の丘水辺公園は、この理念にぴったりと言えます。
この「継承の森」は、光の丘水辺公園の他に、田浦梅の里と衣笠山公園の一部エリアが対象となっています。


光の丘水辺公園周辺の見どころ




