円覚寺弁天堂は、国宝に指定されている円覚寺の洪鐘鋳造の成功に感謝して建てられたという由来を持つ、円覚寺の鎮守です。この洪鐘は、1301年(正安3年)に物部国光によって鋳造されたもので、高さは259.5cmあり、関東でもっとも大きな鐘とされています。
物部国光は「名工」と呼ばれる梵鐘鋳物師でした。しかし、あまりにも大きい鐘のため、名工をもってしても鋳造に二度も失敗してしまいました。そこで、依頼主である鎌倉幕府第9代執権・北条貞時は、時の住職・西澗子曇に相談したところ、七日間に渡って江の島の弁財天に籠って祈願するように教えを得ました。貞時はこれを実践したところ、洪鐘は三度目の鋳造で見事成功したと言います。
このときに、現在の江島神社から江ノ島弁財天を勧請して、「洪鐘大弁才功徳天」と名づけて祀ったのが、円覚寺弁天堂のはじまりです。
主祭神 | 弁財天(洪鐘大弁才功徳天) |
旧社格等 | ― |
創建 | 1301年(正安3年) |
祭礼 | 祭礼 11月28日 洪鐘弁天祭 次回2080年開催予定 ※60年に一度、庚子の年に開催 (ここ数回は延期により、庚子の年に行われていません) |
洪鐘鋳造の成功を祝うため、円覚寺では江島神社と共同で、洪鐘弁天祭という祭礼を開いています。洪鐘弁天祭は、60年に一度、庚子の年に開催していて、円覚寺の宝物風入れの際などに公開される絵巻物で、過去に執り行われた盛大なお祭りの様子を見ることができます。
直近の洪鐘弁天祭は2023年10月29日に開催され、次回は2080年の予定です。(ここ数回は延期のため、庚子の年には行われていません)
父・時宗の志を継いで北条貞時が寄進した「鎌倉三名鐘」の一つ
円覚寺の洪鐘は、時の執権・北条貞時が、円覚寺を創建した父・時宗の志を継いで、国家安泰の世を祈願して寄進したものです。
この洪鐘は関東でもっとも大きな釣鐘とされていますが、名工・物部国光によって細部まで緻密に仕上げられた鎌倉を代表する梵鐘で、建長寺の梵鐘と鎌倉国宝館に寄託されている常楽寺の梵鐘とあわせて、「鎌倉三名鐘」の一つとされています。
禅寺のまち・北鎌倉を眼下に望む弁天茶屋
円覚寺弁天堂と国宝洪鐘は、円覚寺の境内のなかでもひと際高い場所に建っています。長い階段を登るのはたいへんですが、ご利益も大きそうですし、見晴らしも良いです。景色は、気象条件が良ければ富士山も見られますが、遠くまで見渡せるというようなものではなく、眼下の禅寺に抱かれた北鎌倉・山ノ内ならではの空気を感じることができる場所です。紅葉や桜など、季節の移ろいによって、さまざまな表情を見せてくれます。
弁天堂のすぐ横には、弁天茶屋が併設されていて、お弁当や甘味、お抹茶などをいただくことができます。