長窪の切通し(高野の切通)は、大船の高野台と呼ばれるエリアにある、六国見山のふもとに位置する住宅地の中に残る切通しです。
長窪の切通しは、現在の天園ハイキングコースから続く尾根道の、最西端に位置しています。長窪の切通しがいつ頃整備されたのかは分かりませんが、鎌倉市中を経由せずに、尾根道を往く、いわゆる鎌倉街道などの街道筋のバイパス的な道の一部であったと考えられます。
江戸時代に編纂された地誌である「新編鎌倉志」や「新編相模国風土記稿」では、この長窪の切通しに相当する記述や関連していそうな記述は見られないため、江戸時代後期などの近世に開削された可能性もあります。
INDEX
長窪の切通しの名称について
鎌倉市では、1999年に市民投票をもとに選定した「かまくら景観百選」にて、ここで紹介する長窪の切通しを「高野の切通」(鎌倉市高野4-4地先)の名称で認定しています。
本来は「高野の切通」とすべきかもしれませんが、ここでは、多くの人が参照するであろうGoogleマップの登録名(2022年5月現在の情報。住所は、鎌倉市高野4丁目5-1)にしたがって、「長窪の切通し」の名称を用いています。
なお、Googleマップに「高野の切通し」(2022年5月現在の情報。住所は、鎌倉市大船2033)として登録されている場所の名称は、「かまくら景観百選」の選定結果とも異なることから、当サイトでは大船の切通しとして紹介しています。
当サイトでの名称 | Googleマップ上での名称(所在地) | かまくら景観百選の名称(所在地) |
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長窪の切通し(高野の切通) | 長窪の切通し(鎌倉市高野4丁目5-1) | 高野の切通(鎌倉市高野4-4地先) |
大船の切通し | 高野の切通し(鎌倉市大船2033) ※鎌倉市高野にも隣接 | - |
2022年5月現在、鎌倉市では、大船の切通し(Googleマップ登録名「高野の切通し」)には、とくに名称を設けていないとのことでした。
また、「長窪」の地名についても、旧字名などで使用されていたものかどうか鎌倉市へ問い合わせましたが、以下の書籍を確認していただいたものの、記載がないとのことで、詳細は分かりませんでした。
・『大字・小字一覧表』鎌倉市総務課
・『としよりのはなし』鎌倉市教育委員会編(昭和46年発行)
・『相模国鎌倉郡村誌』神奈川県図書館協会編(平成3年発行)
このことから、「長窪」という名称は、長い窪地という地形の特徴から付けられた名称であると考えられます。あるいは、大船の切通しの近くに「七久保」という旧字名があるため、こちらに関係している可能性もあります。
長窪の切通しのかつての役割
現在の長窪の切通しは、高度成長期に開発された住宅地の中にありますが、それまでは六国見山から続く山林でした。明治期末の地図では、大船方面から長窪の切通しを通り、六国見山を南側からまわり込みながら、現在の天園ハイキングコース方面にのびる道が確認できます。
天園ハイキングコースからは建長寺を経由して亀ヶ谷坂(亀ヶ谷坂切通し)または巨福呂坂(巨福呂坂切通し)を通って鎌倉市中方面、覚園寺や瑞泉寺を経由して二階堂方面、そのまま尾根道を西へ向かえば貿易港や塩田があった六浦・金沢文庫方面へ行くことができるため、長窪の切通しはこのような古道の西側の入口の一つとして使われていたものと考えられます。

長窪の切通しへのアクセス
長窪の切通しは観光地化されていないため、とくに標識などもなく分かりにくい場所にあります。それが、古道の雰囲気を留めている一つの要因でもあります。
長窪の切通しの北側の入口は、大船駅方面から、「高野公園」を目指して向かうと分かりやすいでしょう。
長窪の切通しの南側の入口は、北鎌倉駅方面から、JR横須賀線の権兵衛踏切を六国見山森林公園方面に進み、「高野台自治会館」を目印に向かうと分かりやすいです。
なお、高野台自治会館付近から見た大船観音方面の眺望は、「高野からの眺め」として「かまくら景観百選」に選ばれています。

長窪の切通し周辺の見どころ



