小網代の森は、三浦半島の南部にある、相模湾に面した約70haの自然豊かな森です。その希少性から「奇跡の森」と形容されることもあります。小網代の森が「奇跡の森」と呼ばれている理由は、森の中央にある谷に沿って流れる「浦の川」の集水域として、森林・湿地・干潟・海までの流域が連続して残されているためです。
上流から下流まで30分前後で縦断できるくらいの比較的コンパクトな流域の中で、希少種を含む多様な生物と、次々と移り変わる自然の景色をたのしめるのが、小網代の森の魅力です。
小網代の森は、舗装路や建物などに分断されることなく、流域が自然のまま残されている、関東地方で唯一のとても貴重な自然環境です。このような「奇跡の森」でありながら、メインの入口である引橋入口は、駐車場や最寄りのバス停が近くにあり、気軽にアクセスすることができるのも小網代の森の魅力の一つです。
また、小網代の森にはもともと大規模な開発の計画がありましたが、このような貴重な自然環境を守るために神奈川県が土地を買い取り、三浦市やNPO団体とともに保全活動をしています。
INDEX
小網代の森の象徴・アカテガニ等の希少種に出会える奇跡の森
小網代の森では希少種を含む多くの生き物たちが、多様な生態系を形成しています。これまでに2,000種以上の生き物が確認され、絶滅危惧種も多数生息しています。
なかでも、生息のために森・川・海のつながりが必要なアカテガニなどのカニ類は、小網代の森の象徴のような存在と言え、60種前後を記録しています。
季節ごとに、ホタルやアカテガニなどの観察会も開かれています。
主な入口は、流域の上流から下流に向かって歩くことができる引橋入口と、下流から入ることができる宮ノ前峠入口があります。トイレは宮ノ前峠入口のみにあります。駐車場は、引橋入口側に用意されています。
森の中は木道が整備されていて、その上を歩いて散策することができるようになっています。
散策路の途中には「やなぎテラス」「えのきテラス」「眺望テラス」の3ヵ所に木製のデッキが整備されていて、休憩をとれる場所が用意されています。
【上流】コナラが生い茂る森を下る

小網代の森へ引橋入口から入ると、しばらく、コナラが生い茂る林の中を木製の階段で下っていきます。足元にはシダ類の植物が多く見られます。
徐々に平坦になっていき、湿地帯を歩くようになります。足元には木道が整備されています(有名な場所では尾瀬ヶ原の湿原のようなイメージです)。自然環境保護のため、木道を外れて湿地の中に入ることは禁止されています。
この遊歩道は、森の中央の谷を流れる「浦の川」に沿っていて、引橋入口から入るとこの源流から河口にあたる小網代湾までの集水域を歩いていくことになります。

【中流】湿地帯に広がるジャヤナギの林を歩く

湿地帯をしばらく歩くと「やなぎテラス」に出ます。このあたりはジャヤナギが多く見られます。
ちょうど「やなぎテラス」を境にジャヤナギも少なくなってきて、これより河口側は視界の開けた湿原の中を進んでいくようになります。
この小網代の森中流の湿原では、季節によって、トンボやチョウなどの昆虫も目につくようになっていきます。
初夏にホタルが多く見られるのは、「やなぎテラス」より下流の湿原になります。


【下流】オギやヨシの湿原から干潟に抜ける

湿原の中を進んでいき、大きなエノキの木が木陰をつくる広場「えのきテラス」が見えてくると、河口に広がる干潟はもうすぐそこです。「えのきテラス」は全体がベンチのようになっていて、腰を掛けて休めるようになっています。
「えのきテラス」周辺の湿原はオギやヨシの群集になっていて、夏にはユリ科のハマカンゾウがキレイな黄色い花を咲かせます。
小網代の森下流の湿原を抜けると干潟が現われて、小網代湾に出ます。
干潟周辺では、アカテガニやチゴガニなど、さまざまな種類のカニを見ることができます。


【干潟周辺】アカテガニの観察場所

普段、アカテガニは干潟ではなく陸地で生活しています。夏の満月や新月のころの大潮の夜になると、海まで出て、卵を産みます。
小網代の森では、ほぼすべての場所で木道か散策路のみしか自由に移動ができませんので、陸地でアカテガニを観察できる場所は限られています。
比較的観察がしやすい場所は、干潟の陸地との境あたりです。陸地に面した岩と岩の間に隠れている姿を、見ることができます。人の気配がするとすぐ隠れてしまいますので、静かに、根気強く、よーく観察していると、顔を見せてくれるかもしれません。

【干潟】アカテガニ以外にも多くの種類のカニが生息

小網代の森では、アカテガニ以外にも多くの種類のカニを見ることができます。
陸地で生活するカニを見ることは難しいですが、干潟で生活するチゴガニなどは、比較的容易に観察することができます。
チゴガニはとても小さいため見つけにくいですが、干潟を注意深く観察すると見えてきます。くり返し白いハサミを振り上げる求愛ダンスは、とてもかわいらしいです。



「wilderness」ではなく「nature」な自然
このページで使用している写真のほとんどは、ある夏の1日、それも2~3時間程度で撮影したものです。小網代の森が、いかに多様性に富んだ流域であるかということが分かると思います。
もちろん、見られる植物や生物は季節によって異なります。
とはいえ、この「自然」も、手つかずの自然というわけではなく、人の手によって「保全」されているから成り立っているということも忘れてはなりません。
小網代の森の「自然」は、いわゆる「原生林」の「自然(wilderness)」ではなく、「天然林」または「二次林」に近い「自然(nature)」と言えます。
首都圏のいちばん外れにあるとは言え、都市化が進んだ地域と隣接している以上、何も手を施さなければ、植物や生物の外来種の侵入や周囲の開発による影響によって、生態系の破壊は避けられません。
首都圏にあって、森林・湿地・干潟・海までが連続して残されているという「奇跡の森」は、流域の生態系を一度に学ぶことができるとても貴重な環境です。また同時に、ガラス細工のように繊細で簡単に壊れてしまうものであると言うことを、「関東で唯一」という希少性が示しています。一度壊れてしまうと、再生させるためには、人間の寿命よりずっとずっと長いスパンが必要なのです。
【引橋入口】小網代の森の無料駐車場

2025年1月現在、小網代の森の引橋入口に近い、ベイシア三浦店に隣接する三浦市市民交流拠点駐車場を、小網代の森駐車場として利用することができます(開場時間 9:00~21:00、駐車料金 無料)。ベイシア三浦店の2階には「小網代の森インフォメーションスペース」があり、小網代の森についての情報を入手することができます。
三浦市市民交流拠点駐車場へは、国道134号を相模湾沿いに南下してきた場合、ベイシア三浦店の案内板にしたがって「小網代の森入口」交差点を左折すると入ることができます。

国道134号を相模湾沿いに三崎口駅方面から南下してきた場合、ベイシア三浦店の案内板にしたがって「小網代の森入口」交差点を左折します。反対に、三崎港方面、あるいは国道134号を三浦海岸方面からきた場合は、「小網代の森入口」交差点を右折します。
いずれも、小網代の森の引橋入口とは反対側に曲がる必要がありますので、ご注意ください。

「小網代の森入口」交差点を曲がった後は、すぐに右折して(2025年1月現在、直進方面は工事中のため、右折しかできません)、またすぐに、右側に「三浦市市民交流拠点駐車場」という案内板が出ている先を右折します。
このまま、まっすぐ進むとベイシア三浦店の駐車場です。

三浦市市民交流拠点駐車場(小網代の森駐車場)は、土日祝日を含めて無料で利用できますが、夜間は閉場されますのでご注意ください。
【宮ノ前峠入口】小網代の森唯一のトイレと富士山のビュースポット

下流側の入口である宮ノ前峠入口には、小網代の森で唯一のトイレがあります。干潟のある下流から上流の引橋入口側でトイレのあるベイシア三浦店・三浦市市民交流拠点までは30分以上はかかりますので、小網代の森の散策には宮ノ前峠入口を経由するよう計画しておくと良いでしょう。
宮ノ前峠入口近くに鎮座する白髭神社の前からは、気象条件が良ければ、小網代湾越しに富士山を見ることができます。

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小網代の森周辺の見どころ
引橋入口方面




宮ノ前峠入口方面



