スポンサーリンク

英勝寺 | 徳川家康の側室お勝の方が太田道灌邸跡に開いた鎌倉唯一の尼寺

英勝寺・山門上部(撮影日:2022.12.09) 鎌倉
英勝寺・山門上部(撮影日:2022.12.09)

英勝寺えいしょうじは、江戸幕府初代将軍・徳川家康の側室・お勝の方が開いた、鎌倉唯一の尼寺です。お勝の方は、室町時代後期に扇谷上杉家の重臣として活躍した太田道灌おおた どうかんの子孫です。家康の死後、仏門に入り、第3代将軍・徳川家光より鎌倉・扇ガ谷太田道灌の屋敷跡の地を賜り、英勝寺を創建しました。英勝寺という名称は、お勝の方の院号・英勝院から名づけられたものです。

英勝寺の境内では、ツバキアジサイ彼岸花など、四季折々の花をたのしめる寺としても知られています。枝垂れ桜ヤマザクラなどので、東国花の寺百ヶ寺・鎌倉第6番の札所になっています。書院藤棚で見られる白藤の壮麗さは、春の英勝寺の見どころの一つです。
英勝寺の入口にあたる通用門の前には、現在境内で見ごろの花々の案内が掲示されています。
また、晩秋にはモミジイチョウの紅葉が境内を彩ります。

山号東光山
宗派浄土宗
寺格
本尊阿弥陀三尊像
創建1636年(寛永13年)
開山玉峯清因
開基英勝院
英勝寺・通用門の徳川家三つ葉葵の御紋(外側)と太田家桔梗紋(内側)(撮影日:2022.12.09)
英勝寺・通用門の徳川家三つ葉葵の御紋(外側)と太田家桔梗紋(内側)(撮影日:2022.12.09)

英勝寺通用門には、徳川家三つ葉葵の御紋(外側)と太田家桔梗紋(内側)が合わさった紋様が埋め込まれていて、徳川家太田家、両家にゆかりの深い寺であることを物語っています。

英勝寺・「太田道灌邸舊蹟」旧跡碑(撮影日:2022.12.09)
英勝寺・「太田道灌邸舊蹟」旧跡碑(撮影日:2022.12.09)
スポンサーリンク

水戸徳川家と英勝寺

お勝の方は、徳川家康の末男で、常陸水戸藩の初代藩主、水戸徳川家の祖となる、徳川頼房とくがわ よりふさの養母です。英勝寺の開山(初代住持)は、頼房の娘の一人である小良姫玉峯清因尼)で、以降も、明治維新直後までは、英勝寺の住持は水戸徳川家の姫が迎えられていました。

江戸時代を通じて水戸徳川家からあつい庇護を受けた英勝寺は、鎌倉・扇ガ谷からは離れた場所にある逗子・池子も寺領として与えられました。池子村は、廃藩置県前後も水戸藩水戸県(現在の茨城県の一部)に属すなど、明治初期に神奈川県に編入されるまで、水戸徳川家水戸藩などの強い影響下にありました。

スポンサーリンク

英勝院・お勝の方の廟所

英勝寺・祠堂門(撮影日:2022.12.09)
英勝寺・祠堂門【国指定重要文化財】(撮影日:2022.12.09)

お勝の方の本名は「お梶」であったようですが、徳川家康関ヶ原の戦いに同行させたところ勝利したため、「お勝」と改めさせたという逸話が残っています。

お勝の方は、徳川家康の死没後26年たった1642年(寛永19年)に、65歳で亡くなりました。お勝の方の墓英勝寺にあります。
お勝の方の位牌を祀る祠堂しどうは、日光東照宮陽明門唐門のような装飾が特徴の方三間宝形造の建物で、1643年頃の建築とみられています。祠堂は、建物の保護のため、外側をさらにお堂で囲われています。祠堂は、祠堂の手前にある祠堂門唐門)とともに、国の重要文化財に指定されています。

英勝寺・祠堂(撮影日:2022.12.09)
英勝寺・祠堂【国指定重要文化財】(撮影日:2022.12.09)
スポンサーリンク

江戸時代前期の伽藍がそろう英勝寺境内

英勝寺(撮影日:2022.12.09)
英勝寺境内(撮影日:2022.12.09)

英勝寺山門仏殿鐘楼も、祠堂祠堂門と同じ1643年頃に整備されたとみられています。江戸時代前期の建築がほぼそのまま残っていて、いずれも、国の重要文化財に指定されています。
英勝寺山門仏殿鐘楼、および、祠堂門は、禅宗様を基調としつつ、屋根や軒を直線で構成する意匠に統一されています。江戸時代前期のほぼ同じタイミングに統一感のある意匠で建てられた主要な伽藍が、真空パックされたようにこれだけそろって残っている例はとてもめずらしく、山門仏殿の間にある庭園に立つと、まるで江戸時代にタイムスリップしたような感覚を味わえます。
また、ところどころに徳川家三つ葉葵の御紋の装飾が見られるのも、英勝寺らしい特徴です。

英勝寺からもほど近い浄光明寺には、これらの英勝寺の伽藍と同じ時期に造られたと考えられる、英勝寺の旧惣門浄光明寺山門として残っています。

徳川家康ゆかりの地【鎌倉編】大長寺・光明寺・英勝寺

山門

英勝寺・山門(撮影日:2022.12.09)
英勝寺・山門【国指定重要文化財】(撮影日:2022.12.09)

英勝寺山門は、1923年(大正12年)の関東大震災で倒壊した後、鎌倉の別の場所に移築されていましたが、2011年に境内の元の場所に復元されました。入母屋造の三間一戸二階二重門で、二階には釈迦如来十六羅漢像が安置されています(通常非公開)。

英勝寺・山門の徳川家三つ葉葵の御紋(撮影日:2023.03.03)
英勝寺・山門の徳川家三つ葉葵の御紋(撮影日:2023.03.03)

仏殿

英勝寺・仏殿(撮影日:2022.12.09)
英勝寺・仏殿【国指定重要文化財】(撮影日:2022.12.09)

英勝寺の本尊・阿弥陀三尊像が安置されている仏殿は、「もこし」と呼ばれる庇状構造物が付いた、寄棟造の禅宗様建築です。桟唐戸や花頭窓といった本格的な禅宗様の意匠を見ることができます。

英勝寺・仏殿の禅宗様の花頭窓(撮影日:2022.12.09)
英勝寺・仏殿の禅宗様の花頭窓(撮影日:2022.12.09)

鐘楼

英勝寺・鐘楼(撮影日:2022.12.09)
英勝寺・鐘楼【国指定重要文化財】(撮影日:2022.12.09)

英勝寺鐘楼は入母屋造の袴腰形式で、林羅山銘の梵鐘が安置されています。

スポンサーリンク

梅やツバキなどが庭園を静かに彩る初春の英勝寺境内

初春の英勝寺境内では、ツバキなどの花々を楽しめます。どれもボリュームこそ多くありませんが、コンパクトな境内にいろいろな木々が植えられているため、見ごたえがあります。

梅(ウメ)

英勝寺・仏殿と梅(撮影日:2023.03.03)
英勝寺・仏殿と梅(撮影日:2023.03.03)
英勝寺・参道の梅(撮影日:2023.03.03)
英勝寺・参道の梅(撮影日:2023.03.03)

▼その他の鎌倉の梅の名所はこちら▼

【2024 No.4】特集 | 鎌倉梅の名所

椿(ツバキ)

英勝寺・椿(ツバキ)(撮影日:2023.03.03)
英勝寺・椿(ツバキ)(撮影日:2023.03.03)

水仙(スイセン)

英勝寺・水仙(スイセン)(撮影日:2023.03.03)
英勝寺・水仙(スイセン)(撮影日:2023.03.03)

山茱萸(サンシュユ)

英勝寺・山茱萸(サンシュユ)(撮影日:2023.03.03)
英勝寺・山茱萸(サンシュユ)(撮影日:2023.03.03)
スポンサーリンク

書院の白藤の藤棚が美しい春の英勝寺境内

例年、4月下旬から5月上旬ごろに見ごろを迎える書院白藤は、英勝寺を代表する季節の花の一つです。白藤藤棚からしたたり落ちる様子は、壮麗です。
また、春の英勝寺境内では、黄菖蒲ドイツアヤメ(ジャーマンアイリス)などのショウブ/アヤメを多く見られます。竹林の中では、やはりショウブ/アヤメの仲間の、シャガが咲きほこります。
その他に、境内のいろいろな場所でツツジも見られます。

白藤

英勝寺・書院の白藤(撮影日:2023.04.24)
英勝寺・書院の白藤(撮影日:2023.04.24)
英勝寺・書院の白藤と竹林(撮影日:2023.04.24)
英勝寺・書院の白藤と竹林(撮影日:2023.04.24)
英勝寺・書院の白藤の上空に咲く紫色のふじ(撮影日:2023.04.24)
英勝寺・書院の白藤の上空に咲く紫色のふじ(撮影日:2023.04.24)

黄菖蒲

英勝寺・黄菖蒲(撮影日:2023.04.24)
英勝寺・黄菖蒲(撮影日:2023.04.24)

ドイツアヤメ(ジャーマンアイリス)

英勝寺・ドイツアヤメ(ジャーマンアイリス)(撮影日:2023.04.24)
英勝寺・ドイツアヤメ(ジャーマンアイリス)(撮影日:2023.04.24)

彼岸花が主役となる初秋の英勝寺境内

初秋の英勝寺の主役は、梅林の足元に真っ赤なじゅうたんを敷いたかのように咲きほこる彼岸花です。彼岸花は他にも、境内のいろいろな場所で見られます。ところどころ、白い彼岸花も植えられています。
彼岸花より少し先立つ時期には、書院の下での花が咲きほこります。

彼岸花(ヒガンバナ)

英勝寺・仏殿の側に咲く彼岸花(撮影日:2023.10.03)
英勝寺・仏殿の側に咲く彼岸花(撮影日:2023.10.03)
英勝寺・竹林の彼岸花(撮影日:2023.10.03)
英勝寺・竹林の彼岸花(撮影日:2023.10.03)
英勝寺・白い彼岸花(撮影日:2023.10.03)
英勝寺・白い彼岸花(撮影日:2023.10.03)

萩(ハギ)

英勝寺・書院の下で咲くハギ(撮影日:2023.10.03)
英勝寺・書院の下で咲くハギ(撮影日:2023.10.03)
英勝寺・ハギと竹林(撮影日:2023.10.03)
英勝寺・ハギと竹林(撮影日:2023.10.03)

フヨウ

英勝寺・フヨウと山門(撮影日:2023.10.03)
英勝寺・フヨウと山門(撮影日:2023.10.03)

トレニア

英勝寺・トレニア(撮影日:2023.10.03)
英勝寺・トレニア(撮影日:2023.10.03)

モミジやイチョウが鮮やかな紅葉の頃の英勝寺境内

英勝寺では、総門の前のイチョウや、参道山門の横のモミジなど、紅葉の見どころがたくさんあります。

イチョウの黄葉

英勝寺・総門前のイチョウ(撮影日:2022.12.09)
英勝寺・総門前のイチョウ(撮影日:2022.12.09)

モミジの紅葉

英勝寺・参道の紅葉(撮影日:2022.12.09)
英勝寺・参道の紅葉(撮影日:2022.12.09)
英勝寺・山門と紅葉(撮影日:2022.12.09)
英勝寺・山門と紅葉(撮影日:2022.12.09)

以下のリンク先からその他の【鎌倉の紅葉おすすめスポット】の情報もご覧ください

【2024 No.12】特集 | 晩秋の鎌倉・モミジ&カエデの紅葉
【2024 No.12】特集 | 晩秋の鎌倉・イチョウの黄葉

英勝寺の竹林

英勝寺・竹林-1(撮影日:2022.12.09)
英勝寺・竹林-1(撮影日:2022.12.09)

英勝寺の境内奥の、源氏山の山すそには、竹林があります。きれいに手入れされている竹林には散策路が設けられていて、一年を通してさわやかな風が吹いています。

英勝寺・竹林-2(撮影日:2022.12.09)
英勝寺・竹林-2(撮影日:2022.12.09)

その他の英勝寺の見どころ

通用門

英勝寺・通用門(撮影日:2022.12.09)
英勝寺・通用門(撮影日:2022.12.09)

書院

英勝寺・書院(撮影日:2022.12.09)
英勝寺・書院(撮影日:2022.12.09)

金毘羅宮

英勝寺・金毘羅宮(撮影日:2022.12.09)
英勝寺・金毘羅宮(撮影日:2022.12.09)

英勝寺周辺の見どころ

阿仏尼の墓
阿仏尼あぶつには鎌倉時代中期の作家・歌人です。藤原定家の子・藤原為家の側室で、冷泉家初代の冷泉為相れいぜい ためすけの実母です。代表作に、「十六夜日記いざよいにっき」、「うたたね」などがあります。歌...
寿福寺・源実朝と北条政子の墓
寿福寺じゅふくじ(壽福寺)は、源頼朝の死の翌年に、北条政子が頼朝の菩提を弔うために開いた禅宗寺院です。山号になっている「亀谷山」は、寺の背後にある源氏山の別名です。鎌倉五山第三位に列せられ、最盛...
太田道灌の墓
太田道灌おおた どうかんは、室町時代後期から戦国時代にかけて活躍した武将で、相模国守護の扇谷上杉家おうぎがやつうえすぎけを筆頭重臣(家宰)として補佐した太田家の当主です。「道灌」は出家後の法名で、名...
源氏山公園
源氏山公園は、源頼義や頼朝の父・源義朝の屋敷があったとされる寿福寺周辺の背後にある源氏山の山頂一帯に整備された公園です。公園内には、源頼朝像や日野俊基ひのとしもとの墓(宝篋印塔ほうきょういんとう)、...
仮粧坂(化粧坂切通し)
仮粧坂けはいざかは、鎌倉の扇ガ谷と現在の源氏山公園を結ぶ古道です。「化粧坂」や「化粧坂切通し」と表現される場合もあります。「仮粧坂」も「化粧坂」も、読み方は「けはいざか(けわいざか)」です。「鎌倉七...
海蔵寺
海蔵寺は、鎌倉・扇ガ谷おうぎがやつの谷戸の奥に位置する、扇谷上杉家ゆかりの寺院です。扇谷上杉家は、室町時代から戦国時代にかけて栄えた上杉氏の諸家の一つで、歴代の鎌倉公方や古河公方に仕えた他、相模...
亀ヶ谷坂(亀ヶ谷坂切通し)
亀ヶ谷坂かめがやつざかは、鎌倉の扇ガ谷と北鎌倉の山ノ内を結ぶ古道です。「亀ヶ谷坂切通し」と表現される場合もあります。「鎌倉七口かまくらななくち(鎌倉七切通)」の一つに数えられていて、国の史跡に指定さ...
浄光明寺
浄光明寺じょうこうみょうじは、鶴岡八幡宮境内の西側に位置する扇ヶ谷(亀ヶ谷)の支谷の一つ・泉ヶ谷にある、真言宗泉涌寺派の準別格本山です。開基は、鎌倉幕府第5代執権・北条時頼と第6代執権・北条長時...

DATA

住所 鎌倉市扇ガ谷1-16-3
アクセス
行き方

JR横須賀線・湘南新宿ライン、江ノ電「鎌倉駅(西口)」より、徒歩約15分

駐車場 なし
営業時間

9:00~16:00
※2022-2023年末年始 12月29日(木)~1月2日(月)は拝観休止

休業日 木曜日
料金

<拝観料>
大人 300円
高校生 200円
中学生以下 100円

電話番号 0467-22-3534
※このページに掲載している内容は、予告なく変更となっている場合があることをご了承ください。
※地図は、右上のレイヤーボタンから、「オープンストリートマップ」「地理院地図」「Google マップ」に切り替えられます。大まかな場所を知りたい場合は「Google マップ」、目的地付近の詳細な道路地図を調べたい場合は「オープンストリートマップ」または「地理院地図」を選択すると分かりやすいです。左上の縮尺ボタンとあわせてご活用ください。
error: 申し訳ありません。コピーはできません。
タイトルとURLをコピーしました