スポンサーリンク

円覚寺舎利殿 | 純粋な禅宗様建築の鎌倉はもちろん神奈川県唯一の国宝の建造物

円覚寺・舎利殿を斜め前から望む(撮影日:2023.11.04) 鎌倉
円覚寺・舎利殿を斜め前から望む(撮影日:2023.11.04)

円覚寺舎利殿えんがくじ しゃりでんは、「佛牙舎利ぶつげしゃり仏舎利ぶっしゃり)」というお釈迦様の歯の遺骨が祀られているお堂です。同時に、舎利殿の背後に建つ、円覚寺開山の無学祖元禅師(仏光国師)を祀る開山堂に礼拝するための昭堂も兼ねています。
舎利殿の建築は、安土桃山時代の天正年間、後北条氏第3代当主・北条氏康によって、鎌倉尼五山第一位であった太平寺(廃寺)の仏殿を移築したものと考えられていて、室町時代の建築物と推定されています。(諸説あり)

円覚寺舎利殿は、禅宗とともに宋(当時の中国)より伝わった建築様式・禅宗様(唐様)のみで構成された貴重な建築であることから、建造物としては神奈川県で唯一の国宝に指定されています。
舎利殿は通常非公開ですが、例年、正月3ヶ日・GW・11月上旬の円覚寺宝物風入にあわせて特別公開され、建物の外観を見学することができます。

円覚寺・白銀の唐門と舎利殿(撮影日:2024.02.06)
円覚寺・白銀の唐門と舎利殿(撮影日:2024.02.06)
スポンサーリンク

源実朝が宋の能仁寺から請来した佛牙舎利

円覚寺・舎利殿(撮影日:2023.11.04)
円覚寺・舎利殿(撮影日:2023.11.04)

舎利」とは、サンスクリット語で遺骨を意味する「シャリーラ」を日本語に音写したもので、お釈迦様の遺骨なので「仏舎利(ぶっしゃり)」と呼ばれています。円覚寺舎利殿には、お釈迦様の右の奥歯が祀られていることから、とくに「佛牙舎利(ぶつげしゃり)」と呼ばれています。

円覚寺舎利殿佛牙舎利は、鎌倉幕府第3代将軍・源実朝が宋の能仁寺から請来したものと伝えられています。
ある日、源実朝は自分が南山律宗の祖・道宣の生まれ変わりであるという夢を見ました。同じ夜に、寿福寺栄西鶴岡八幡宮良真も同じ夢を見たことから、実朝道宣の開山の能仁寺佛舍利を請来したと言われています。
日本における臨済宗の開祖である寿福寺栄西は、源実朝に多くの影響を与えたと考えられています。南宋へのあこがれもその一つと言えます。宋で修業した経験を持つ栄西が身近にいたことで、実朝は多くの情報を見聞する機会がありました。

源実朝の時代には、まだ円覚寺は創建されていません。実朝が請来した佛牙舎利は、もとは実朝が建立した大慈寺新御堂、廃寺)に安置されていたと伝えられています。これを、円覚寺第二世・佛源が、鎌倉時代中期の1285年(弘安8年)に、執権北条氏ゆかりの円覚寺へ遷してお祀りするようになったと言われています。

源実朝ゆかりの地 | 和歌などの朝廷文化を愛した最後の源氏将軍
スポンサーリンク

円覚寺舎利殿で見られる禅宗様建築の特徴

円覚寺・舎利殿・禅宗様の特徴を示す軒の反り、扇垂木、詰組(撮影日:2023.11.04)
円覚寺・舎利殿・禅宗様の特徴を示す軒の反り、扇垂木、詰組(撮影日:2023.11.04)

円覚寺舎利殿は、純粋な禅宗様のみで構成された貴重な建築であるとされています。寺院の建築も時代によってさまざまなトレンドが生まれていて、一般的には新しい時代になればなるほど、複数の様式が組み合わされていくようになります。

円覚寺舎利殿には、具体的に以下のような禅宗様建築の特徴が見られます。

  • 美しいカーブを描く軒の反り
  • 軒裏の垂木を放射状に置く扇垂木
  • 柱の上だけでなく柱と柱の間にも組み物を密に配置する詰組
  • 枠組みの中に薄い板をはめ込んだ桟唐戸
  • 開口部の上部が櫛型にデザインされた花頭口および花頭窓
  • 採光や通風のための開口部が弓状にデザインされた弓欄間
  • 弓欄間に添えられた宝珠
  • 建物をより重厚なものに見せる庇状の裳階

円覚寺舎利殿はけっして大きな建築ではありませんが、建物の間近に立って実物を見てみると、塊感とデザインの緻密さ、美しさに圧倒されます。

円覚寺・舎利殿・禅宗様の特徴を示す桟唐戸、花頭口、弓欄間、宝珠、裳階(もこし)(撮影日:2023.11.04)
円覚寺・舎利殿・禅宗様の特徴を示す桟唐戸、花頭口、花頭窓、弓欄間、宝珠、裳階(もこし)(撮影日:2023.11.04)
スポンサーリンク

舎利殿周辺の円覚寺境内の見どころ

円覚寺
円覚寺えんがくじは、1282年(弘安5年)に、鎌倉幕府第8代執権・北条時宗によって創建された寺院です。禅を広めて、災いや戦乱をしずめ国の平安をまもることと、元寇(蒙古襲来)による殉死者を敵味方の...
正続院・開山堂(円覚寺塔頭)
正続院しょうぞくいんは、円覚寺えんがくじに20か院近くある塔頭の1院で、円覚寺開山の無学祖元禅師(仏光国師)の塔所です。正続院境内の一番奥に、無学祖元を祀る開山堂が建っています。(「塔頭(たっち...
黄梅院(円覚寺塔頭)
黄梅院おうばいいんは、円覚寺えんがくじに20か院近くある塔頭の1院で、円覚寺15世の夢窓疎石むそう そせき(夢窓国師)の塔所です。円覚寺開基・北条時宗の正室・覚山尼が時宗追善のために建立した華厳...
佛日庵・開基廟(円覚寺塔頭)
佛日庵ぶつにちあん(仏日庵)は、円覚寺えんがくじに20か院近くある塔頭の1院で、円覚寺の開基である鎌倉幕府第8代執権・北条時宗の廟所(墓所)です。時宗の子で第9代執権・北条貞時と、孫にあたる第1...
円覚寺 弁天堂・国宝洪鐘&弁天茶屋
円覚寺弁天堂えんがくじ べんてんどうは、国宝に指定されている円覚寺の洪鐘おおがね鋳造の成功に感謝して建てられたという由来を持つ、円覚寺の鎮守です。この洪鐘は、1301年(正安3年)に物部国光もの...
円覚寺の紅葉
円覚寺えんがくじの広い境内では、ほぼ全域で紅葉をたのしめます。円覚寺の紅葉は、例年、11月上旬から少しずつ色づいていき、11月下旬~12月上旬にピークを迎えます。イチョウに比べて、モミジ・カエデが圧...
スポンサーリンク

円覚寺周辺の見どころ

北鎌倉古民家ミュージアム
北鎌倉古民家ミュージアムは、北鎌倉駅の駅近、円覚寺のお隣りにある、再生した古民家を利用した美術館です。毎回趣向をこらした展覧会はもちろんのこと、築100年以上の3棟の建物を合体・再生した古民家自体も...
東慶寺
北鎌倉・山ノ内にある東慶寺とうけいじは、女性のための縁切寺だったことで知られ、かつては男子禁制の尼寺でした。封建的な時代にあっては、女性の味方である、とても貴重な存在だったことに間違いないでしょ...
浄智寺
浄智寺じょうちじは、鎌倉幕府第5代執権・北条時頼の三男・宗政の菩提を弔うために創建された、臨済宗円覚寺派の寺院です。最盛期には七堂伽藍を備えた大寺院で、建長寺、円覚寺、寿福寺(壽福寺)に次ぐ、鎌...
明月院(あじさい寺)
明月院めいげついんは北鎌倉を代表する花の寺として知られていて、とくに、6月には約2,500株のアジサイが境内を埋めつくすことから「あじさい寺」「紫陽花寺」という愛称で親しまれています。また、明月...
建長寺
建長寺けんちょうじは、1253年(建長5年)に、鎌倉幕府第5代執権・北条時頼ほうじょう ときよりによって創建された、鎌倉で最古の禅宗専門の寺院です。臨済宗建長寺派の大本山で、鎌倉五山の第一位に列...

DATA

住所 鎌倉市山ノ内409 ※円覚寺の情報(以下同様)
アクセス
行き方

●北鎌倉駅から円覚寺総門まで徒歩の場合
JR横須賀線・湘南新宿ライン「北鎌倉駅」より徒歩約1分

●鎌倉駅から円覚寺総門までバス利用の場合
JR横須賀線・湘南新宿ライン、江ノ電「鎌倉駅(東口)」より、江ノ電バス「大船駅」行き、「上大岡駅」行き、「本郷台駅」行きで『北鎌倉駅』下車徒歩約1分

※円覚寺総門から舎利殿まで徒歩約7分

駐車場 なし ※団体バス専用駐車スペースのみあり(当日予約制)
営業時間

※通常非公開
例年、正月3ヶ日・GW・11月上旬の宝物風入にあわせて特別公開

<円覚寺拝観時間>
3月~11月 8:30~16:30
12月~2月 8:30~16:00
※舎利殿の拝観時間は別途あり

料金

<円覚寺拝観料>
大人 500円(高校生以上)
子ども 200円(小中学生)
※舎利殿の拝観料は別途設けられる場合あり

電話番号 0467-22-0478
ウェブサイト https://www.engakuji.or.jp/
※このページに掲載している内容は、予告なく変更となっている場合があることをご了承ください。
※地図は、右上のレイヤーボタンから、「オープンストリートマップ」「地理院地図」「Google マップ」に切り替えられます。大まかな場所を知りたい場合は「Google マップ」、目的地付近の詳細な道路地図を調べたい場合は「オープンストリートマップ」または「地理院地図」を選択すると分かりやすいです。左上の縮尺ボタンとあわせてご活用ください。
error: 申し訳ありません。コピーはできません。
タイトルとURLをコピーしました