成就院は「鎌倉七口」の一つである極楽寺坂切通にある、参道から鎌倉のまちなみが一望できる、眺望の素晴らしい寺院です。
以前は鎌倉でも有数のあじさいのお寺として知られていましたが、参道沿いのあじさいの多くはハギに植え替えられました。
成就院の縁結び不動明王は、恋愛成就のパワースポットとしても知られています。
弘法大師・空海が諸国巡礼の折に護摩修行を行った場所に、鎌倉幕府第3代執権・北条泰時が建立したのが成就院のはじまりです。
1333年(元弘3年)新田義貞の鎌倉攻めで焼失して別の場所に移りましたが、1688年(元禄元年)に現在の元の場所に再建されました。
山号 | 普明山 |
宗派 | 真言宗大覚寺派 |
寺格 | ― |
本尊 | 不動明王 |
創建 | 1219年(承久元年) |
開基 | 北条泰時 |
昭和に入って稲村ケ崎の切通が開削されるまで、鎌倉を目指した古の西国の人々は、現在の江ノ電・極楽寺駅方面から極楽寺坂切通に入って、ちょうど成就院の山門の前ではじめて鎌倉のまちなみを目にしました。
ここからの由比ヶ浜や鎌倉市街の眺望は、現在も私たちをたのしませてくれています。
INDEX
かつては「あじさい寺」として知られた成就院
成就院は、かつては、海への眺望が素晴らしい参道の脇に咲きほこるあじさいが有名で、鎌倉でも明月院、長谷寺とともに「あじさい寺」として知られていました。
創建800年を迎えるにあたり2015年からはじまった参道の全面改修工事を機に、成就院では参道のあじさい262株は東日本大震災で津波の被害にあった宮城県南三陸町に寄贈されました。
宮城県南三陸町へは長谷寺など他の鎌倉の有志からも2,000株のあじさいが移植されていて、鎌倉で多くの人たちに親しまれていた花々が、現在は遠く離れた人たちの癒しや希望になっています。
成就院のあじさいは、以前より数は減っていますが、初夏の参道を彩ってくれています。はじめは50株ほどからの再出発でしたが、徐々に花の勢いも増してきているようです。
それに、成就院のあじさいの見どころは、なんと言っても由比ヶ浜の海を借景にした景観で、ボリュームが小さくなっても、鎌倉を代表するあじさいの鑑賞スポットであることに変わりません。
▼その他の鎌倉のあじさいの名所はこちら▼
アジサイの参道はハギの参道に
創建800年を記念した改修後の成就院の参道には、宮城県の県花であるハギが植えられています。
アジサイのイメージが強い成就院ですから、「萩の名所」と呼ばれるようになるまでには少し時間がかかるかもしれませんが、今後も語り継がれていくことになるであろうアジサイの参道がハギの参道になった由来は、いろいろなことに思いをはせるきっかけになることでしょう。
中世の西国の人たちが最初に目にした鎌倉
成就院で、名物の海の眺望とあわせてたのしめるのはハギやアジサイばかりではありません。山門前に咲く桜と海のマッチングも見事です。
現在、極楽寺坂切通の車道は成就院の本堂がある境内よりもだいぶ下を走っていますが、中世からの切通は成就院の参道にあたる坂だったと考えられます。
山門前はちょうど峠のピークにあたります。
鎌倉の西の端に位置する極楽寺坂切通は京都や東海道方面から鎌倉に入るための入口だったため、他の「鎌倉七口」が東国や鎌倉幕府に近しい者たちが多く利用する切通だったのに比べて、少し性格が異なっていたものと思われます。
そうした外部の旅人たちが鎌倉を訪れた際に最初に目にした鎌倉のまちなみが、この成就院の山門前からの眺望でした。
▼その他の鎌倉の桜の名所はこちら▼
恋愛成就のパワースポット
成就院の境内には、本尊である不動明王の分身・縁結び不動明王が祀られていて、恋愛成就のパワースポットとして知られています。もちろん、恋愛だけでなく、仕事やその他の人間関係の縁結びにも効果はあるのでしょう。
参拝したら、写真に撮って、スマホなどの待ち受け画面に設定することで御守りがわりにもなります。
宗教的な観点や混雑を避けるためなどさまざまな理由や事情から、境内や仏像の写真撮影を禁止している寺社も少なからずあるなか、公式に撮影を推奨していて、現代の感覚に寄り添ってくれているところがうれしいです。ただ単に懐古主義を伝える宗教や極端な教えを説く新興宗教より、よほど願いが成就しそうな気がします。
▼その他の鎌倉のパワースポットはこちら▼
知恵を授けてくれる虚空蔵菩薩
成就院の境内を出た、極楽寺坂切通の長谷寄りの入口付近には、成就院が管理する星井寺・虚空蔵堂があります。奈良時代の高僧・行基と縁があると伝わるお寺です。
虚空蔵菩薩は、知恵を授けてくれると言われる仏さまです。とくに、十三参りと呼ばれる行事では、数え年13歳の男女が福徳と知恵を授けてもらうために参拝します。(十三参りは要予約)
以下のリンク先からその他の【北条泰時ゆかりの地】もご覧ください