三浦半島南部に位置する三浦(三浦市)には、龍神にまつわるスポットが数多く点在しています。龍は海の守護神とされることが多く、漁業や航海とは切っても切れない関係にあった三浦では、古くから龍神信仰が根付いてきたものと考えられます。
2025年は巳年・へび年ですが、蛇は実在する動物として龍と同一視されることが多く、蛇もまた、海の神様や水の神様として信仰されています。
また蛇は、芸事や学問、金運などのご利益があるという弁財天の使い、あるいは化身などとされています。三浦で弁財天と言えば、三浦七福神の一人、筌龍弁財天が有名です。
この特集記事では、さらに、三浦で定番のパワースポット・馬の背洞門と、番外編として、大蛇伝説が残る雨崎神社をご紹介します。雨崎神社は非常に分かりにくい場所にありますので、土地勘のある方にしかおすすめしません。
マップは、スマートフォンやタブレットでは二本指で操作できます。
海南神社 筌龍弁財天&子産石
三崎漁港近くに鎮座する三浦半島の総鎮守・海南神社には、三浦七福神の筌龍弁財天が祀られています。
1180年(治承4年)、源頼朝が伊豆で挙兵した際、和田義盛ら三浦一族もこれに呼応しましたが、本拠地である衣笠城が落城し、房総半島に渡るために久里浜から舟で東京湾に逃れました。
なんとか海上に逃れましたが、衣笠城から命からがら敗走して来た三浦一族の面々は、戦による疲労と飢えで限界を迎えていました。
しかし、和田義盛が龍神に祈ったところ、「筌(せん)」が流れてきて、それで魚を獲ることによって飢えをしのぐことができたと言います。
しばらくして、義盛は「筌」が龍に化けて現われる夢を見たため、三浦一族ともゆかりの深い三崎の地にお堂を建てて祀ったのが、筌龍弁財天のはじまりと伝えられています。
また、海南神社の境内には、源頼朝お手植えと伝わる、雄雌2本の大銀杏の御神木が立っています。
このうち、雌株は枝が垂れていて乳房のような形をしています。この枝の下には、子宝・安産・良縁の石である「子産石」が安置されていて、軽く触れることで願いが叶うとされています。
2025年の干支である蛇(巳)は、生命力や繁殖力が強い生き物であることから、子孫繁栄の象徴ともされています。巳年の子産石は、ダブル効果が期待できるパワースポットであると言えます。
●住所
三浦市三崎4-12-11
●拝観料
無料(志納)
●公共交通機関
京急久里浜線「三崎口駅」より京急バス「城ヶ島」「通り矢」「三崎港」「浜諸磯」行きで『三崎港』下車、徒歩約3分
●駐車場
あり(境内右手の社務所近く) ※駐車台数が少なく、お正月はとくに混雑するため、公共交通機関か三崎港周辺のコインパーキングの利用もおすすめします。
三浦半島のその他の安産祈願のパワースポット
子産石(久留和)
十二所神社(三浦十二天)
淡島神社
大巧寺(おんめさま)
光念寺 筌龍弁財天
海南神社の筌龍弁財天は、三崎の光念寺から分霊されたものとされています。光念寺は海南神社に近い丘の上にあります。海南神社とあわせて、元祖・筌龍弁財天へも参拝すれば、開運効果がアップするかもしれません。
筌龍弁財天は、境内に入ってすぐ右側にある弁天堂に祀られています。
光念寺は、平安時代後期から鎌倉時代前期に活躍した三浦一族の武将・和田義盛が開基となって建立された寺院です。和田義盛が三浦半島に建立した七阿弥陀堂の一つであるとされています。
龍神のご加護により無事に対岸の房総半島にたどり着いた和田義盛ら三浦一族は、同じく舟で逃れてきた源頼朝や北条時政・義時らと合流することができました。
このとき、和田義盛は源頼朝に、御家人を束ねる立場である侍所別当を所望し、後日、勢力を拡大して鎌倉入りを果たした際に、この望みを現実のものとしています。並みいる御家人たちのなかでも大出世と言えます。
脱皮をくり返す姿から、蛇は再生や復活の象徴とされることがあります。筌龍弁財天にはさらに、出世のパワーも持ち合わせているのかもしれません。
●住所
三浦市三崎1-18-1
●拝観料
無料(志納)
●公共交通機関
京急久里浜線「三崎口駅」より、京急バス「三崎東岡」「城ヶ島」「通り矢」「三崎港」「浜諸磯」行きで『三崎東岡』下車、徒歩約5分
または、京急バス「城ヶ島」「通り矢」「三崎港」「浜諸磯」行きで『三崎港』下車、徒歩約7分
●駐車場
あり
城ヶ島公園・馬の背洞門
馬の背洞門は、城ヶ島南岸の赤羽根崎にある、長い長い年月をかけて波や雨風の浸食によってできた海蝕洞穴です。太平洋に面した城ヶ島の荒々しい地形のなかでも際立つ奇岩であり、また美しさも感じられます。
三浦半島のさらに南に位置する城ヶ島の、とくに南岸は、人を寄せ付けないほどの暴風または暴風雨になることもめずらしくありません。馬の背洞門は、過酷な環境のなかでこそ生み出された、強い自然の力を感じることができるパワースポットです。
●住所
三浦市三崎町城ヶ島
●入場料
無料
●公共交通機関
城ヶ島公園入口経由の場合
京急久里浜線「三崎口駅」より京急バス「城ヶ島」行き『白秋碑前』下車徒歩約15分
城ヶ島灯台入口経由の場合
京急久里浜線「三崎口駅」より京急バス『城ヶ島』行きで終点下車、ハイキングコース(丘の上、または、海岸線沿いの岩場の2通りのルートあり)経由で、徒歩約20分
●駐車場
あり ※県立城ヶ島公園駐車場、または城ヶ島西側駐車場(城ヶ島灯台方面)が利用できますが、駐車場からはバスでのアクセスと同様のルートを歩く必要があります。
三浦半島のその他の奇岩パワースポット
秋谷の立石(立石公園)
長者ヶ崎
【番外編】雨崎神社(浅間神社)
横須賀市の久里浜と野比の境にある千駄ヶ崎から、三浦市の金田海岸まで続く金田湾最南端の岬を、雨崎と言います。この雨崎の丘の山頂に祀られているのが、雨崎神社(浅間神社)です。「雨崎様」あるいは「浅間様」と呼ばれる大蛇が祀られています。
雨崎は雨乞いの神聖なる地で、大蛇が住んでいたと言います。凶作や日照りが続くと雨崎にある井戸に出かけ、井戸の中をかきまわすと、3日でも4日でも、必要なだけ雨が降ってくれたと伝えられています。
雨崎に住む「雨崎様」や「浅間様」と呼ばれた大蛇は、対岸の房総半島との間を泳いで行き来しているのですが、どれくらいの大きさの蛇なのかは分からないと言います。大蛇のいるときに雨崎に近づくと、熱病におかされて、口もきけないほど寒気がきて、やがて死んでしまうと伝えられていて、誰もその姿を見たものはいないからです。
後に、「雨崎様・浅間様」は、村人たちによって雨崎の山上で祀られるようになり、毎年4月3日には祭礼が行われるようになったと言います。
中世や近世・近代にかけて(明治維新の神仏分離以前は神仏習合という形を含め)、全国の神社の多くは、日本書記などの日本神話に登場する神々や神話時代以降の歴史上の人物を信仰の対象とするようになりました。
しかし、原始的な神社は、この雨崎神社の伝承のように、人々の暮らしと隣り合わせにあるような「神」(雨崎神社の場合は雨乞いの神)を祀るようなものだったはずです。
神話の神々などに置き換えられたことで、そこに神様が祀られた意味がオブラートに包まれたようにぼんやりとしたものになっていった神社が多いなか、雨崎神社は神社本来の原始的な姿を留める貴重なパワースポットと言えるでしょう。
●住所
三浦市南下浦町金田
●拝観料
無料(志納)
●公共交通機関
京急久里浜線「三浦海岸駅」より京急バス「三崎東岡(剱崎経由)」「剱崎」行きで『小浜』または『松輪』下車、徒歩約20分
●駐車場
なし