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上総広常ゆかりの地 | 鎌倉で非業の最期を遂げた上総介殿の聖地巡礼

上総広常ゆかりの地 | 鎌倉で非業の最期を遂げた上総介殿の聖地巡礼 歴史上の人物

上総広常かずさ ひろつね上総介広常かずさのすけ ひろつね)の鎌倉周辺でのゆかりの地は、館(屋敷)があったとされる、朝夷奈切通あさいなきりどおし朝比奈切通しあさひなきりどおし)エリアに集中しています。そのため、鎌倉周辺で上総広常の聖地巡礼をする際は、朝夷奈切通を中心に考えることになります。
朝夷奈切通は、鎌倉市と横浜市の間にある、峠道です。中世から続く古道のため駐車場はなく、少し離れたバス通り沿いで探すことになります。最寄りバス停までのバスの起点となっている鎌倉駅や金沢八景駅からの便は、悪くありません。いずれにしましても、朝夷奈切通エリアで上総広常の聖地巡礼をするためには、バス通りから徒歩が基本ということになります。
また、朝夷奈切通エリア以外からも、鎌倉時代の歴史書「吾妻鏡あづまかがみ」に見られる上総広常ゆかりの地をいくつかピックアップしていきます。

中世の古道の雰囲気を感じられる朝夷奈切通は、鎌倉方面と六浦(横浜市金沢区)方面を直線的に結ぶメインルートだけでなく、十二所果樹園じゅうにそかじゅえん熊野神社を経由する迂回ルートもあるため、これらを周遊するのがオススメです。大きな杉林に囲まれた熊野神社周辺は、朝夷奈切通ともまた違った独特な雰囲気が漂っています。

上総広常ゆかりの地マップ-朝夷奈切通
上総広常ゆかりの地MAP 朝夷奈切通エリア
上総広常ゆかりの地マップ-広域
上総広常ゆかりの地MAP 広域エリア
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上総広常の館跡とされる 十二所果樹園

上総広常の鎌倉での館(屋敷)は朝夷奈切通(朝比奈切通し)沿いにあったとされていますが、詳しい場所までは分かっていません。
源頼朝の御家人として、坂東(関東)で最大勢力をほこった上総広常ですので、それ相応の立地や広さであったことは容易に想像できます。
鎌倉時代の歴史書である「吾妻鏡」によると、鎌倉入りした源頼朝が、鶴岡八幡宮つるがおかはちまんぐうの近くに新造した大倉御所に入居する前は、上総広常の館に滞在していたことも描かれています。
2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第15回「足固めの儀式」の本編終了後にゆかりの地を紹介する「紀行」のコーナーでは、十二所果樹園じゅうにそかじゅえんの近くにあったという説をとっていました。
十二所果樹園鎌倉最大の梅林ですが、寺院や神社に梅の名所が多い鎌倉では、穴場的な場所です。
また、十二所果樹園は鎌倉市で2番目に標高が高い場所(2番目に標高が高い「山」とされているのは六国見山)のため、東京湾越しに、上総広常の所領であった房総半島も良く見渡すことができます。

●住所
鎌倉市十二所

●駐車場
なし(近隣にコインパーキングもなし)

●公共交通機関
JR横須賀線・湘南新宿ライン、江ノ電「鎌倉駅(東口)」より、京急バス「鎌倉霊園正面前太刀洗」行き、「金沢八景駅」行きで『十二所神社』下車、徒歩約20分

十二所果樹園(撮影日:2019.02.26)

周辺の見どころ
池子の森自然公園 ※十二所果樹園は逗子市の池子の森に隣接していますが、立入禁止エリアがあるため、直接行くことはできません。

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上総国への東京湾のショートカットに利用できた 六浦

鎌倉の海と言えば、鶴岡八幡宮から一直線にのびる若宮大路わかみやおおじの終点でもある、相模湾に面した由比ヶ浜ゆいがはまが有名です。中世には「前浜」とも呼ばれていました。
しかし、現在でも海水浴場が開設されることからも分かるように、遠浅のため、船の着岸には適していません。そのため、鎌倉幕府第3代執権・北条泰時の時代に、由比ヶ浜沖の海上に人工の港・和賀江嶋(和賀江島)わかえしま/わかえのしまを築くことになります。和賀江嶋は、現存する日本最古の築港跡として国の史跡に指定されています。
和賀江嶋築港の前も後も、鎌倉の本格的な港として機能していたのが、東京湾に面した六浦むつうら/むつら(現在の横浜市金沢区)でした。現在の六浦周辺は内陸に位置していて海までは遠いですが、中世には入り江がこの奥深くまで入り込んでいたと見られています。
上総広常が鎌倉と本拠地であった房総半島の上総国とを行き来する場合は、他人の領地をいくつも横断しながら東京湾を半周して向かうこともできましたが、この六浦から東京湾をショートカットしたほうが容易に可能なため、おそらくそのようにしていたでしょう。
現在の六浦は、江戸時代以降の新田開発や埋め立て事業などによって港の面影は留めていません。周辺で唯一自然の海岸として残されているのは、野島公園内の乙舳海岸おっともかいがんくらいです。

●住所
横浜市金沢区野島町24 ※野島公園・乙舳海岸(以下、同様)

●駐車場
あり

●公共交通機関
金沢シーサイドライン「野島公園駅」より徒歩約5分
または、京急線・金沢シーサイドライン「金沢八景駅」より徒歩約25分

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鎌倉の外港・六浦に通じる 朝夷奈切通

鎌倉の重要な港であった六浦と鎌倉の中心部を結ぶために開削されたのが朝夷奈切通あさいなきりどおし朝比奈切通しあさひなきりどおし)です。
上総広常が、鎌倉の中心地にも、自身の本拠地にもアクセスしやすい朝夷奈切通沿いに館を構えたというのは、理にかなった話です。
朝夷奈切通は、いわゆる「鎌倉七口」の一つに数えられています。鎌倉七口の中でも古道の雰囲気をよく留めていて、国の史跡に指定されています。
この峠越えは複数のルートがあったと考えられますが、現在の朝夷奈切通のルートは、鎌倉幕府第3代執権・北条泰時の時代に整備されたものと見られています。
鶴岡八幡宮大倉御所(大倉幕府)を起点に、朝夷奈切通の峠道を越えて、六浦へと至る六浦道(現在の金沢街道)沿いには、上総広常の他にも、大江広元梶原景時など、多くの有力御家人たちが館(屋敷)を構えていたことで知られています。

●住所
横浜市金沢区朝比奈町字峠坂1番地、鎌倉市十二所

●駐車場
なし(近隣にコインパーキングもなし)

●公共交通機関
鎌倉駅からバス利用の場合
JR横須賀線・湘南新宿ライン、江ノ電「鎌倉駅(東口)」より、京急バス「鎌倉霊園正面前太刀洗」行き、「金沢八景駅」行きで『十二所神社』下車徒歩約20分

金沢八景駅からバス利用の場合
京急線・金沢シーサイドライン「金沢八景駅」より京急バス「鎌倉駅」行き、または神奈川中央交通バス「大船駅」行き、「上郷ネオポリス」行きで、『朝比奈』下車徒歩約10分

徒歩の場合
京急逗子線「六浦駅」より徒歩約40分
または、JR横須賀線・湘南新宿ライン、江ノ電「鎌倉駅(東口)」より徒歩約1時間5分

朝夷奈切通・横浜側の入口近くの切通(撮影日:2022.04.13)

周辺の見どころ
朝比奈熊野神社

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坂東の覇者としてのプライドをのぞかせた 佐賀岡浜での逸話

自身の兵力をほとんど持っていなかった源頼朝にとって、平家打倒の挙兵からそれほど日がたたないうちに坂東(関東)で最大勢力をほこる上総広常が味方になってくれたことは、とても大きなことでした。このことが、頼朝の坂東での足固めには決定的となったと言っても過言ではありません。
上総広常からしても、坂東の覇者としてのプライドは高かったようで、「吾妻鏡」には以下のようなエピソードが残されています。
源頼朝が納涼のため佐賀岡浜(現在の葉山町の一色海岸三ヶ下海岸のあたりと推定)を訪れた際、三浦一族らとともに出迎えた上総広常は下馬せずに頼朝に礼をして、佐原義連にとがめられています。広常はその際、「公私ともに三代に渡ってそのような礼をしたことはない」と応えています(広常頼朝の父・源義朝にも仕えていました)。また、その後の宴の席でも、はじめに岡崎義実が所望した頼朝水干すいかん(簡素な平安装束)の取り合いで喧嘩沙汰を起こしていて、他の御家人たちに対しても強い態度でいたことがうかがい知れます。
ただし、「吾妻鏡」は北条氏の視点で書かれた歴史書であるため、北条氏の都合が良いように脚色されている可能性も否定できません。

●住所
三浦郡葉山町一色 ※一色海岸(以下、同様)

●駐車場
あり(海岸周辺に公共駐車場やコインパーキングあり)

●公共交通機関
JR横須賀線・湘南新宿ライン「逗子駅」または京急逗子線「葉山・逗子駅」より、京急バス「海岸回り葉山」行きで『一色海岸』下車、あるいは、山回りの長井方面行きで『葉山』下車

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梶原景時が上総広常を討った後に刀を洗った 太刀洗水

上総広常は、本格的な平家討伐の戦いがはじまる前に、源頼朝によって排除されてしまいました。広常に謀反の疑いがあるとの理由でしたが、後にその疑いは晴れることになります。
上総広常の最期は、頼朝の命を受けた侍所所司の梶原景時によって、双六に興じている最中に刀で首を斬られて殺害されたとされています。いくら坂東で最大勢力をほこっていた広常でも、1対1で遊んでいる最中に斬られたのでは、ひとたまりもなかったことでしょう。
梶原景時上総広常の血のりの付いた刀を洗ったとされるのが、朝夷奈切通の鎌倉側の入口近くにある太刀洗たちあらいです。
太刀洗水は、鎌倉五名水の一つに数えられています。

●住所
鎌倉市十二所

●駐車場
なし

●公共交通機関
鎌倉駅からバス利用の場合
JR横須賀線・湘南新宿ライン、江ノ電「鎌倉駅(東口)」より、京急バス「鎌倉霊園正面前太刀洗」行き、「金沢八景駅」行きで『十二所神社』下車徒歩約10分

金沢八景駅からバス利用の場合
京急線・金沢シーサイドライン「金沢八景駅」より京急バス「鎌倉駅」行き、または神奈川中央交通バス「大船駅」行き、「上郷ネオポリス」行きで、『朝比奈』下車徒歩約20分

徒歩の場合
京急逗子線「六浦駅」より徒歩約50分
または、JR横須賀線・湘南新宿ライン、江ノ電「鎌倉駅(東口)」より徒歩約55分

梶原太刀洗水全体像(撮影日:2018.03.14)

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上総広常の墓所とされる 上総介塔

もともと、坂東の安堵を願う上総広常と、朝廷も取り込んで平家政権に取って代わろうとする源頼朝の間には、ヴィジョンの違いがありました。しかし、それでも、広常頼朝に対する忠誠心は、他の坂東武者とは異質な、高いものがあったと考えられます。
上総広常は、源頼朝が挙兵した直後に自らに味方して、すぐに参上するように要求されますが、頼朝の器を確かめるために、わざと遅れて参上したというエピソードが残されています。
目の前の状況に左右されがちな坂東武者が多かったなか、上総広常は、頼朝と1対1で向き合って信頼関係を築こうとした、数少ない武将の一人だったと言えます。
現在、上総広常の墓または供養塔と伝わる五輪塔「上総介塔」は、朝夷奈切通の、自らの本拠地への玄関口であった六浦側に建っています。バス通りの歩道沿いにあるため、少々場所が分かりにくいですが、金沢八景駅方面に向かう「朝比奈」バス停の近く(朝夷奈切通への入口の車道を挟んだ反対側)にあります。

●住所
横浜市金沢区朝比奈町

●駐車場
なし

●公共交通機関
金沢八景駅からバス利用の場合
京急線・金沢シーサイドライン「金沢八景駅」より京急バス「鎌倉駅」行き、または神奈川中央交通バス「大船駅」行き、「上郷ネオポリス」行きで、『朝比奈』下車すぐ

鎌倉駅からバス利用の場合
JR横須賀線・湘南新宿ライン、江ノ電「鎌倉駅(東口)」より、京急バス「金沢八景駅」行きで『朝比奈』下車すぐ

徒歩の場合
京急逗子線「六浦駅」より徒歩約25分

上総介塔(上総広常の墓)(撮影日:2022.04.13)

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