浄智寺は、鎌倉幕府第5代執権・北条時頼の三男・宗政の菩提を弔うために創建された、臨済宗円覚寺派の寺院です。
最盛期には七堂伽藍を備えた大寺院で、建長寺、円覚寺、寿福寺(壽福寺)に次ぐ、鎌倉五山の第四位に列せられていました。
総門から続く杉木立を抜けて現われる、花形の窓が特徴的な鐘楼門は、他の鎌倉の寺院には見られないような様式で、禅宗の文化を伝えた中国(宋や唐)の影響を現代にまで伝えています。
境内には、鎌倉十井の一つに数えられる甘露の井や、鎌倉七福神の一つである布袋尊などもあります。
また、浄智寺は葛原岡・大仏ハイキングコースの北鎌倉側の入口にあたり、境内の谷戸を奥に進んで行くと、天柱峰を経由して葛原岡神社や源氏山公園方面に続いています。
山号 | 金峰山 |
宗派 | 臨済宗円覚寺派 |
寺格 | 鎌倉五山第四位 |
本尊 | 木像三世仏坐像 (阿弥陀如来・釈迦如来・弥勒如来) |
創建 | 1281年(弘安4年) |
開山 | 兀庵普寧、大休正念、南州宏海 |
開基 | 北条宗政、北条師時 |
鎌倉五山の第四位という格の禅寺ながら、唐様の鐘楼門や、山深い大寺院のような雰囲気など、鎌倉の他の寺院とは一味も二味も違った魅力が漂っています。
浄智寺の寺域には、かつて、映画監督の小津安二郎や日本画家の小倉遊亀が住んでいたことでも知られていて、アーティスト好みの環境でもありました。
INDEX
山深い大寺院のような鎌倉石の参道
浄智寺のようなスケール感で、総門から山門まで、巨木に囲まれた鎌倉石の石段を一直線に登っていくというシチュエーションが鎌倉には意外とありません。
まわりの木々は、うっそうと茂るわけでも、整然と並ぶわけでもなく、ほどよい抜け感があります。一本一本があまりにも大きく、それに対して総門や山門は控えめな大きさであることも、鎌倉っぽくない、もっと山深いところにある大寺院のような、雄大な雰囲気にしているのかもしれません。
唐様のデザインが特徴的な鐘楼門
山門は、鐘つき堂を兼ねた造りの鐘楼門で、二階の花頭窓の奥に鐘が収められています。現在の建物は2007年に再建されたものですが、それ以前に建っていた門と同じ唐様の独特なデザインです。
鎌倉には禅宗の寺院が多くありますが、質実剛健さこそが禅寺の姿と言わんばかりの門が多いなか、浄智寺はそれらとは一線を画したアイデンティティを選択したのがおもしろいです。
過去・現在・未来を象徴する三世仏
浄智寺の本堂は、曇華殿と呼ばれる仏殿です。
御本尊は木像三世仏坐像で、阿弥陀如来・釈迦如来・弥勒如来それぞれが、過去・現在・未来を示しています。室町期に造られたもので、鎌倉仏の特徴をよく表わした姿をしていると言います。
曇華殿の裏手には、茅葺き屋根が特徴の書院があります。曇華殿の左側からまわると、庭園を見ることができます。
浄智寺の紅葉の見どころは参道や本堂周辺
浄智寺では、参道や本堂・曇華殿のまわりなどで、イチョウの黄葉やカエデの紅葉を、時期をずらしてたのしむことができます。例年、イチョウは11月下旬ごろ、カエデは12月上旬ごろが見ごろです。
浄智寺がある谷戸を奥へと進んでいくと葛原岡・大仏ハイキングコースに続いていて、葛原岡神社や源氏山公園を経由して、長谷の鎌倉大仏方面などに行くことができます。ハイキングコースを利用して、鎌倉の紅葉狩りめぐりを堪能することもできます。
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浄智寺は葛原岡・大仏ハイキングコースの北鎌倉側の入口
葛原岡・大仏ハイキングコースは、境内から直接続いているわけではなく、一旦、境内の出入口から外に出て向かう必要があります。
ハイキングコースの途中で出会う天柱峰という丘までが浄智寺の寺域で、その広さからも、往時は大寺院であったことがうかがえます。
映画監督の小津安二郎や日本画家の小倉遊亀が住んでいた場所もこの天柱峰に向かう途中で、浄智寺周辺は文化人にも愛されていた土地です。鎌倉の市街地とは行き来しづらい場所のため、静かな環境にあることが好まれたのかもしれません。
山すそに残るやぐらや石塔
浄智寺の山すそ沿いにはやぐらが多数残っています。また、その周辺には、やぐらからあふれるように、五輪塔や宝篋印塔などの石塔が並んでいます。
鎌倉江の島七福神の一つ 布袋尊
境内のもっとも外れには、「鎌倉江の島七福神」の一つで、福徳円満のご利益があるとされる布袋尊が安置されています。布袋尊の前には手掘りの小さなトンネルが通っています。
鎌倉十井の一つ 甘露の井
境内の入口には、鎌倉十井の一つに数えられる井戸・甘露の井があります。蜜のように甘く、不老不死の功徳がある霊水というのが、名前の由来です。
境内の奥のほうにある井戸でも、甘露の井と同じ水が出ます。