百八やぐら群は、鎌倉・二階堂の谷戸に建つ覚園寺の裏山一帯に広がるやぐら群です。やぐらは、天園ハイキングコース(鎌倉アルプス)の覚園寺入口と今泉台6丁目入口の分岐(交差点)付近から、覚園寺の山号になっている鷲峰山の山頂にかけて点在しています。その数は180穴近くにのぼり、百八やぐら群は鎌倉エリアで最大規模のやぐら群です。
「やぐら」とは、鎌倉時代から室町時代に鎌倉やその周辺の崖地(人工的に造成したものも含む)に造られた、横穴式の墳墓または供養の場です。実際に被葬者が納骨されている墓の場合と、五輪塔が置かれ供養の場として築かれた場合とがあります。
寺院に伴うものや、切通などが残る鎌倉中心部とその外の淵にあたるような場所に多く築かれました。百八やぐら群のある、現在の天園ハイキングコースも、中世の鎌倉の淵にあたる場所であったと考えられます。
鎌倉は平地が少ないため崖地を利用したのですが、誰でも「やぐら」に葬られていたわけではなく、武士や僧など一部の上流階級に限られていました。
INDEX
謎に包まれた往時の姿
百八やぐら群のやぐら群は、中世から今日まで、人通りのある道のすぐ側にあったこともあり、自然の風化に加えて、後の時代に人為的に手を加えられているものが多いと見られます。そのため、現在でも多数の仏像や五輪塔などが見られますが、いつ誰が誰のために、どのやぐらにどのようなものを安置したのかを、正確に知ることはできません。近代、明治期以降に納められたものもあるようです。
百八やぐら群でとくに特徴的なのは、首が斬り落とされたようにも見える、頭部が欠損した仏像が多いことでしょう。この原因も詳しくは分かっていませんが、明治期の廃仏毀釈によるという説や、経年劣化による頭部の崩落とする説などがあります。
百八やぐら群の行き方
百八やぐら群の入口は、天園ハイキングコースの覚園寺入口と今泉台6丁目入口の分岐(交差点)付近から、10mほど覚園寺入口方面に行った場所にあります。標識等がなく分かりにくいですが、上の写真の中央付近にある細い脇道を、左上に登って行きます。脇道を登りきると、すぐに、目の前に百八やぐら群が姿を現わします。ハイキングコース上の道と違って、歩くのに注意が必要な場所もありますが、天園ハイキングコースと並行するように、山の斜面にやぐら群が続いています。
鎌倉・逗子で見られるその他の「やぐら」
百八やぐら群のやぐらほど大規模なものはなかなかありませんが、以下のような場所でも、それぞれ特徴的なやぐらを見ることができます。
天園ハイキングコース周辺
山ノ内から二階堂にかけての天園ハイキングコースの尾根道から少し下った南側の斜面沿いは、鎌倉のなかでももっともやぐらが集中している場所の一つです。百八やぐら群の西側には朱垂木やぐら群があります。
北鎌倉周辺(山ノ内)
源氏山周辺(扇ガ谷)
金沢街道周辺(浄明寺)
逗子周辺
天園ハイキングコースの見どころ
「鎌倉アルプス」とも言われる天園ハイキングコースは、鎌倉市街地の背後にそびえる山々を横断するハイキングコースです。
そのため、鎌倉・二階堂方面や北鎌倉方面の寺院などを行き来するアクセス路としても利用できます。
また、東に進むと、鎌倉市最高峰の大平山や天園を経由して、横浜自然観察の森や金沢市民の森、横浜市最高峰の大丸山、金沢自然公園(金沢動物園)などの横浜・金沢区方面に抜けることができます。