スポンサーリンク

百八やぐら群 | 天園ハイキングコースの覚園寺裏山に眠る180穴の墳墓

百八やぐら(撮影日:2021.12.10) 鎌倉
百八やぐら(撮影日:2021.12.10)

百八やぐらは、鎌倉・二階堂の谷戸に建つ覚園寺の裏山一帯に広がるやぐら群です。やぐらは、天園ハイキングコース(鎌倉アルプス)覚園寺入口今泉台6丁目入口の分岐(交差点)付近から、覚園寺の山号になっている鷲峰山の山頂にかけて点在しています。その数は180穴近くにのぼり、百八やぐら群鎌倉エリアで最大規模のやぐら群です。

やぐら」とは、鎌倉時代から室町時代に鎌倉やその周辺の崖地(人工的に造成したものも含む)に造られた、横穴式の墳墓または供養の場です。実際に被葬者が納骨されている墓の場合と、五輪塔が置かれ供養の場として築かれた場合とがあります。
寺院に伴うものや、切通などが残る鎌倉中心部とその外の淵にあたるような場所に多く築かれました。百八やぐら群のある、現在の天園ハイキングコースも、中世の鎌倉の淵にあたる場所であったと考えられます。
鎌倉は平地が少ないため崖地を利用したのですが、誰でも「やぐら」に葬られていたわけではなく、武士や僧など一部の上流階級に限られていました。

スポンサーリンク

謎に包まれた往時の姿

百八やぐら・やぐら内に安置された仏像(撮影日:2021.12.10)
百八やぐら・やぐら内に安置された仏像(撮影日:2021.12.10)

百八やぐら群やぐら群は、中世から今日まで、人通りのある道のすぐ側にあったこともあり、自然の風化に加えて、後の時代に人為的に手を加えられているものが多いと見られます。そのため、現在でも多数の仏像五輪塔などが見られますが、いつ誰が誰のために、どのやぐらにどのようなものを安置したのかを、正確に知ることはできません。近代、明治期以降に納められたものもあるようです。

百八やぐら群でとくに特徴的なのは、首が斬り落とされたようにも見える、頭部が欠損した仏像が多いことでしょう。この原因も詳しくは分かっていませんが、明治期の廃仏毀釈によるという説や、経年劣化による頭部の崩落とする説などがあります。

百八やぐら・やぐら前に建つ五輪塔(撮影日:2021.12.10)
百八やぐら・やぐら前に建つ五輪塔(撮影日:2021.12.10)
スポンサーリンク

百八やぐら群の行き方

天園ハイキングコース・覚園寺入口・今泉台6丁目入口分岐(撮影日:2021.12.10)
天園ハイキングコース・覚園寺入口・今泉台6丁目入口分岐(撮影日:2021.12.10)

百八やぐら群の入口は、天園ハイキングコース覚園寺入口今泉台6丁目入口の分岐(交差点)付近から、10mほど覚園寺入口方面に行った場所にあります。標識等がなく分かりにくいですが、上の写真の中央付近にある細い脇道を、左上に登って行きます。脇道を登りきると、すぐに、目の前に百八やぐら群が姿を現わします。ハイキングコース上の道と違って、歩くのに注意が必要な場所もありますが、天園ハイキングコースと並行するように、山の斜面にやぐら群が続いています。

百八やぐら・無数のやぐらが口を開ける鷲峰山の斜面(撮影日:2021.12.10)
百八やぐら・無数のやぐらが口を開ける鷲峰山の斜面(撮影日:2021.12.10)
スポンサーリンク

鎌倉・逗子で見られるその他の「やぐら」

百八やぐら群やぐらほど大規模なものはなかなかありませんが、以下のような場所でも、それぞれ特徴的なやぐらを見ることができます。

天園ハイキングコース周辺

山ノ内から二階堂にかけての天園ハイキングコースの尾根道から少し下った南側の斜面沿いは、鎌倉のなかでももっともやぐらが集中している場所の一つです。百八やぐら群の西側には朱垂木やぐら群があります。

北鎌倉周辺(山ノ内)

源氏山周辺(扇ガ谷)

金沢街道周辺(浄明寺)

逗子周辺

まんだら堂やぐら群
まんだら堂やぐら群は、鎌倉七口の一つに数えられている、鎌倉と、逗子を経由して三浦半島各地を結ぶ名越切通にある大規模なやぐら群です。まんだら堂やぐら群のやぐらは、集合住宅のように2~4段に重なり、その...
池子の森自然公園
池子の森自然公園は池子住宅地区及び海軍補助施設(池子米軍家族住宅地区)内にある公園です。公園は大きくスポーツエリアと緑地エリアに分かれていて、それぞれ、2015年と2016年から利用が開始さ...
こんぴら山やぐら群
こんぴら山は、神武寺境内の西側にそびえる山です。JR東逗子駅方面から表参道を登って行くと、向かって左手に見える丘陵地にあります。こんぴら山やぐら群は、この山の山頂から一段下がった斜面に、神武寺境内の...
神武寺みろくやぐら群
神武寺みろくやぐら(弥勒やぐら)は、鎌倉周辺に千から数千基現存するとされるやぐら(主に中世に造られた横穴式の墳墓または供養の場)の中で、供養されている人物が特定できる唯一のやぐらです。このみ...
桐ヶ谷家先祖やぐら横穴・沼間横穴群
桐ヶ谷家先祖やぐら横穴は、逗子・沼間の堀の内と呼ばれる場所にある、古墳時代から奈良時代の横穴式墳墓です(逗子市指定重要文化財)。横穴内部の発掘調査で発見された、中世以前に多く作られた須恵器や土師器類...
スポンサーリンク

天園ハイキングコースの見どころ

鎌倉アルプス」とも言われる天園ハイキングコースは、鎌倉市街地の背後にそびえる山々を横断するハイキングコースです。
そのため、鎌倉・二階堂方面や北鎌倉方面の寺院などを行き来するアクセス路としても利用できます。
また、東に進むと、鎌倉市最高峰の大平山天園を経由して、横浜自然観察の森金沢市民の森、横浜市最高峰の大丸山金沢自然公園金沢動物園)などの横浜・金沢区方面に抜けることができます。

鎌倉・二階堂方面

獅子舞(獅子舞谷)
獅子舞ししまいは、鎌倉の山で見られる一番の紅葉の名所です。獅子舞谷ししまいがやつの山奥に、例年、11月下旬にはイチョウの黄葉が、12月上旬にはモミジの紅葉が、どちらも鎌倉で最高クラスのスケールと美し...
覚園寺
覚園寺は、1218年(建保6年)に鎌倉幕府第2代執権・北条義時よしときが建立した大倉薬師堂を前身とする寺院です。鎌倉幕府第3代将軍・源実朝みなもとのさねともが鶴岡八幡宮で公暁に暗殺される前年、義...
永福寺跡
永福寺ようふくじは1192年(建久3年)に源頼朝が創建した寺院です。読み方は「えいふくじ」ではなく、「ようふくじ」です。源頼朝による1189年(文治5年)の奥州合戦(奥州征伐)で戦死した、奥州藤...
鎌倉宮(大塔宮)
鎌倉宮かまくらぐうは、明治天皇の勅命によって創建された、後醍醐天皇の皇子・護良親王(もりながしんのう/もりよししんのう)を祀る神社です。護良親王は還俗する前は大塔宮(おおとうのみや/だいとうのみ...
北条首やぐら
北条首やぐらは、1333年(元弘3年)の新田義貞らによる鎌倉攻めで敗れた北条一門を祀っているとされるやぐら(主に中世に造られた横穴式の墳墓または供養の場)です。北条得宗(嫡流)家の菩提寺で、北条一門...
瑞泉寺
瑞泉寺ずいせんじは、夢窓疎石むそう そせき(夢窓国師)によって建立された、臨済宗円覚寺派の寺院です。紅葉ヶ谷もみじがやつと呼ばれる谷戸に建っていて、その名前のとおり紅葉の名所として知られています...

尾根道沿い

朱垂木やぐら群
朱垂木やぐら群しゅだるきやぐらぐんは、建長寺塔頭の回春院がある谷戸の最奥に、20穴ほどからなるやぐら(主に中世に造られた横穴式の墳墓または供養の場)群です。やぐら/やぐら群の名称は、その所在地にちな...
十王岩
十王岩じゅうおういわは、建長寺境内最奥・半僧坊の裏にある勝上嶽展望台から天園ハイキングコースを大平山方面に5分ほど歩いた場所にある磨崖仏です。鎌倉の中心市街への眺望が良いことから、「鎌倉十王岩の眺望...
勝上嶽展望台
勝上嶽展望台(勝上巚展望台)しょうじょうけん てんぼうだいは、建長寺境内最奥の山上に位置する、鎌倉でも有数の眺望スポットです。勝上嶽の中腹には建長寺の鎮守・半僧坊が鎮座していて、ここから急な階段を登...
大平山
大平山おおひらやまは鎌倉市の最高峰で、標高159.4mの山です(最高地点は天園の広場)。天園ハイキングコースの中継地点になっていて、天園方面に下った先にはコース上唯一の公衆トイレがあります(公衆トイ...
天園
鎌倉を代表するハイキングコースである天園ハイキングコースの名前の由来となった「天園てんえん」は、日露戦争で連合艦隊を率いた東郷平八郎が「天国の園に遊ぶよう」と形容したことに由来していると言われていま...

北鎌倉方面

今泉台方面

DATA

住所 鎌倉市二階堂429番・428番
アクセス
行き方

●鎌倉駅から天園ハイキングコース覚園寺入口経由
JR横須賀線・湘南新宿ライン、江ノ電「鎌倉駅(東口)」より、京急バス「鎌倉宮(大塔宮) 」行きで終点『大塔宮』まで行き、『大塔宮』から覚園寺入口を経由して、覚園寺入口から百八やぐらまで徒歩で約20分(鎌倉駅から覚園寺までの所要時間は除く)
または、JR横須賀線・湘南新宿ライン、江ノ電「鎌倉駅(東口)」より、鎌倉宮~覚園寺入口を経由して、徒歩で約1時間(全行程徒歩の場合)

●北鎌倉駅から天園ハイキングコース建長寺・半蔵坊入口経由
JR横須賀線・湘南新宿ライン「北鎌倉駅」より、建長寺・総門~半蔵坊を経由して、建長寺・半蔵坊入口から百八やぐらまで徒歩で約40分(北鎌倉駅から建長寺・半蔵坊までの所要時間は除く)
※建長寺の境内は別途拝観料が必要です

●今泉台6丁目入口から
徒歩約5分

駐車場 なし
料金

無料

※このページに掲載している内容は、予告なく変更となっている場合があることをご了承ください。
※地図は、右上のレイヤーボタンから、「オープンストリートマップ」「地理院地図」「Google マップ」に切り替えられます。大まかな場所を知りたい場合は「Google マップ」、目的地付近の詳細な道路地図を調べたい場合は「オープンストリートマップ」または「地理院地図」を選択すると分かりやすいです。左上の縮尺ボタンとあわせてご活用ください。
error: 申し訳ありません。コピーはできません。
タイトルとURLをコピーしました